https://funatoya.com/funatoka/Rauber-Kopsch.html
(RK244(左上顎骨:外側面観)、245(左上顎骨:鼻腔面観)、RK246(骨口蓋・切歯縫合・上歯列の咀嚼面) 、RK247(骨口蓋・切歯縫合・歯槽) 、RK248(**骨口蓋・切歯骨・乳歯・永久歯:**2歳児の頭蓋)、RK268(眼窩と上顎洞の内側面、翼口蓋窩) 、RK269(鼻腔(右)の外側壁)、RK270(**鼻腔(右)の外側壁:**中鼻甲介および下鼻甲介の大部分を除去) )
上顎骨は臓弓性骨格に属する主要な骨の一つで,眼窩の底・鼻腔の底と側壁・口腔の天井の形成に関与し,左右それぞれ上歯列の全ての歯を支えている。
上顎骨は1つの体と4つの突起から構成される。すなわち歯槽突起・口蓋突起・頬骨突起・前頭突起である。
体Corpus maxillaeは三面を持つピラミッド形とみなせる。その底は鼻腔面Facies nasalisで鼻腔に面し、頂点は頬骨突起に相当する。他の三面は前面Facies anterior、後方の側頭下面Facies infratemporalis、上方の眼窩面Facies orbitalisである。
前面Facies anteriorは、第1大臼歯付近から発する鋭い隆起線—頬骨下稜Crista infrazygomatica—と頬骨突起の付着部によって後面と区別される。前面の上縁を眼窩縁Margo orbitalisという。眼窩縁の約5mm下方に卵円形の眼窩下孔Foramen infraorbitaleがあり、これは眼窩下管Canalis infraorbitalisの前方開口部である。この孔の下には浅い犬歯窩Fossa caninaがあるが、その位置と大きさには個人差が大きい。前面の内側には鼻切痕Incisura nasalisという鋭い切れ込みがあり、ここで鼻腔面に連続している。
頬骨突起と頬骨下稜の後方にある面、すなわち側頭下面Facies infratemporalisには、後方へ向かって膨らんだ上顎結節Tuber maxillaeという隆起がある。
上顎結節は下方でやや細くなり、この部分は口蓋骨の錐体突起と蝶形骨の翼状突起が付着する粗面を形成している。この粗面を下内側に向かって1本の滑らかな溝が走っており、この溝は口蓋骨の溝と合わさって口蓋管Canales palatiniを形成する。
上顎結節には歯槽孔Foramina alveolariaという2、3個の孔があり、後方の歯に至る神経や血管がこれを通って歯槽管Canales alveolaresに入る。側頭下面の上内側隅は角張っており、凹凸があって、口蓋骨の眼窩突起の付着部となっている。
上面、すなわち眼窩面Facies orbitalisはほぼ平坦で、三角形をなし、外側へ傾斜している。前面との境界は眼窩縁Margo orbitalisという鋭い稜を形成している。眼窩面の後縁は下眼窩裂の下方境界をなす。また内側縁は口蓋骨・篩骨の紙様板および涙骨と接している。眼窩面には眼窩下溝Sulcus infraorbitalisという溝があり、そこで平面が中断している。この溝は後縁に切れ込みを作り、前方へ走って徐々に眼窩下管Canalis infraorbitalisという完全な管に移行する。
内面、すなわち鼻腔面Facies nasalisは鼻腔の側壁の一部を形成している。この面には不規則な四辺形の広い開口部がある。これは上顎洞の開口で、上顎洞裂孔Hiatus sinus maxillarisと呼ばれる。前頭突起への移行部に横走する凹凸のある隆起がある。これは下鼻甲介の付着部で鼻[甲]介稜Crista conchalisと呼ばれる。鼻甲介稜は前頭突起の涙骨縁と合して、後方へ向かう1本の隆起線を形成する。この隆起線は涙嚢溝Sulcus lacrimalisを前方から包んでいる。また涙嚢溝の後縁をなすものは、上顎洞裂孔の前縁上部から起こって涙嚢溝を包むように巻き込んだ小骨板(ヘンレの半月Lunula von Henle)である。
上顎洞Sinus maxillaris(Oberkieferhöhle)、またはハイモア腔Highmorehöhleとも呼ばれる大きな空洞は、上顎体と同様に3面を持つピラミッド形をしている。上顎洞は中鼻道に開口する。
上顎洞には4つの陥凹があり,それぞれ上顎骨の各突起に対応している。すなわち頬骨陥凹(Recessus zygomaticus),前頭陥凹(R. frontalis),口蓋陥凹(R. palatinus),歯槽陥凹(R. alveolaris)である。最も重要なのは凹面をなす歯槽陥凹で,これが上顎洞の底となっている。最も低い箇所は第1大臼歯の根に当たる。上顎洞の底はこの箇所から前方へは比較的急な傾斜で,後方へはゆるい傾斜で高くなり,犬歯の歯槽はほとんど常に上顎洞の前に位置する。
犬歯の歯槽が上顎洞内に突出する例もあるが,通常は小臼歯の歯槽さえも上顎洞の底から少し離れている。しかし,小臼歯と大臼歯の根が紙のように薄い骨質の層だけに包まれ,上顎洞内へ多少とも突出していることがある。これらの事実は臨床上大きな意味を持つ。
上顎洞の広い開口は近在の骨によって狭められている。それは篩骨の鈎状突起,口蓋骨の一部,および下鼻甲介の一部である(RK270(**鼻腔(右)の外側壁:**中鼻甲介および下鼻甲介の大部分を除去) )。
上顎骨の前面と側頭下面の内面には歯槽管(Canales alveolares)という細い溝や管が走っている。
上顎骨の前頭突起(Processus frontalis,Stirnfortsatz)は上顎体の前内側部から上方,同時にやや後方へ向かって伸びている。前頭突起の面は体の前面と鼻腔面に連続的に移行している。
前頭突起の前縁は鼻骨と結合するために凹凸がある。後縁は鋭い2本の稜に分かれており,後方のものは涙骨縁(Margo lacrimalis)で涙骨と結合し,外側のものは前涙嚢稜(Crista lacrimalis anterior)で,自由縁となっており涙骨縁とともに涙嚢溝(Sulcus lacrimalis)を形成している。前涙嚢稜の下端のすぐ後ろで上顎体の眼窩面の内側縁が半月形に切れ込んで涙骨切痕(Incisura lacrimalis)をつくる。涙骨と下鼻甲介によって,涙嚢溝の下部は鼻涙管(Canalis nasolacrimalis)という骨性の管になるが,上部では涙骨と前頭突起との涙嚢溝が涙嚢窩(Fossa sacci lacrimalis)を形成する。前頭突起の内面の上半部には篩骨稜(Crista ethmoidea)という斜走する隆起があり,篩骨の中鼻甲介がここに接する。
上顎体の外面と眼窩面が外側で合するところに、短くて幅広い三角形の頬骨突起(Processus zygomaticus)がある。この突起の下角から、滑らかな1本の隆起が上顎体の外面を真っすぐ下へ伸びている。これが頬骨下稜(Crista infrazygomatica)で、前述のように上顎体の外面を前面と側頭下面に分けている。