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(図275(女性の骨盤内臓器)、図276(女性骨盤部の正中断面)、図285(女性の骨盤内臓器) )
卵巣は小骨盤の入口のすぐ下で骨盤の外側壁に接している。卵巣の縦軸はおおよそ体の縦軸の方向に相当し、上端は後上方に、下端は前下方に向かっている。付着部である卵巣間膜縁は前上方を向き、自由縁は凸をなして後下方に向かっている。したがって、卵巣の両側面はほぼ矢状面上にある。外側面は通常骨盤の側壁に密接し、内側面は骨盤腔に向かっている。子宮の位置が正中からずれると、より遠くなった方の卵巣は多少とも位置が変わり、骨盤腔内へ引き込まれる。このとき、卵巣の外側面はむしろ前方を向き、内側面はそれだけ後方を向くことが多い。
卵巣の卵管端は、腹膜のひだである卵巣提靱帯Plica suspensoria ovariiと、それによって支えられている卵管采によって卵管の腹腔口とつながっている。正常な場合、卵管の外側端は上行するだけでなく、同時に後下方に弓状に曲がって後戻りする。そのため、漏斗は卵巣の後方に向かった自由縁およびその縁に近い面の上に直接乗っている。
子宮の下部は、一部は腹膜により、一部は結合組織によって膀胱の後壁と密につながっている。子宮はあまりしっかり固定されていないため、膀胱の充満度によってその位置が影響を受ける。膀胱がかなり充満すると、子宮は後方に押しやられ、子宮体の傾きが減って立ち上がる。膀胱が空になると、子宮は前方に傾くか、あるいは前方に曲がり、頚と体のなす角がより鋭くなる。子宮と膀胱の間にある腹膜のポケットは膀胱子宮窩Excavatio vesicouterinaと呼ばれ、ここは前後の壁が接触しているため特別なものは入っていない。比較的まれだが、後傾後屈Retroversion und Retroflexionの子宮がある場合、膀胱と子宮の間に腸の係蹄が入り込む。このような位置にある子宮では、子宮広間膜と卵管も影響を受け、後方に引き寄せられるが、卵巣の位置はそれほど影響されない。
前傾Anteversioとは全体としての子宮の傾きを指し、前屈Anteflexioとは子宮体と頚の間の屈曲を意味する。
膀胱の充満度によって子宮の位置が変わるのと同様に、直腸やS状結腸が充満すると子宮は前述とは反対の方向に動く。多くの場合、子宮と直腸の間にある腹膜のポケット、すなわち直腸子宮窩Excavatio rectouterina(ダグラス腔Cavum Douglasi)の中に腸の係蹄が入っている。これが膀胱子宮窩の中に入ることは極めてまれである。直腸が強く充満すると、腟と子宮は前方に押しやられ、上述のポケットは狭くなり、最終的には腸係蹄を外に押し出す。
子宮は正中からずれた位置にあることが多く、その場合はたいてい右側に偏っている。これはS状結腸が小骨盤において左側に位置を占めることによって生じる。骨盤筋の緊張度や体位もまた、女性の内部生殖器の位置に影響を与える。