1. 錐体部の管の中で最も太いのは頚動脈管Canalis caroticusである(RK230(左側頭骨:下面観)、231(左側頭骨:前面観) )。

    この管は錐体の下面中央の頚動脈管外口から始まり、初めはほぼ垂直に上昇して中耳前壁の大部分を形成する。その後、迷路の蝸牛の下で前内側方へほぼ直角に曲がり、緩やかに上昇して錐体尖の内口で終わる。錐体尖では頚動脈管の上壁が不完全なことが多い。頚動脈管からは2本の細い頚鼓小管Canaliculi caroticotympanici が鼓室へ通じている。

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    RK230(左側頭骨:下面観)、231(左側頭骨:前面観)

  2. 顔面神経管Canalis n. facialisは内耳道底の上部に始まり(RK227(内耳道底) )、ほぼ直線的に前方へ顔面神経管裂孔Hiatus canalis n. facialisに向かう。そこで鋭角に後外側方へ折れ曲がり、顔面神経管膝Geniculum canalis n. facialisを形成する。その後、鼓室と外側骨半規管の露出部の間を通り、鼓室の前庭窓の上を経由し、外側半規管の下で再び緩やかに下方へ向きを変え、茎乳突孔Foramen stylomastoideumで終わる(RK233(顔面神経管の経路) )。この下方への曲がりの下で、鼓室の錐体隆起Eminentia pyramidalisが顔面神経管の壁に続いている。顔面神経管は茎乳突孔に開く直前で重要な鼓索神経小管Canaliculus chordae tympaniを出す。この管は前上方へ伸び、鼓室溝の後縁のすぐ近くで鼓室に開口する。

    顔面神経管の下部は乳突小管Canaliculus mastoideusと交差している。この管は頚静脈窩に始まり、鼓室乳突裂で終わる。

    顔面神経管の全経路は3つの部分に分けられる。膝に至るまでが第1部で、蝸牛と前庭の間でやや上方に位置する。第2部は中耳にあり、前庭窓と外側骨半規管の露出部によってその位置が決まる。第3部は鼓室の後壁から1〜2mm離れて平行に、ほぼ垂直に下方へ走る。

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    RK227(内耳道底)

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    RK233(顔面神経管の経路)

  3. 鼓室小管Canaliculus tympanicusは錐体小窩内の鼓室小管外口Apertura externa canaliculi tympanici に始まる。鼓室の下壁を貫き、鼓室小管鼓室口Apertura tympanica canaliculi tympanici で鼓室に開く。その後、鼓室内側壁の岬角溝Sulcus promontorii を通って上方へ向かい、鼓室上壁の小浅錐体神経小管鼓室口Apertura tympanica canaliculi n. petrosi superficialis minoris に至る。小浅錐体神経小管Canaliculus n. petrosi superficialis minoris は鼓室上壁を貫き、顔面神経管裂孔の外側で錐体の大脳面に開く。この開口が小浅錐体小管内口Apertura interna canaliculi n. petrosi superficialis minoris である。

  4. 頚動脈管の上部と平行に、その外側壁に接して筋管総管Canalis musculotubalisが走る。その上半部が鼓膜張筋半管Semicanalis m. tensoris tympaniで、下半の広い部分が耳管半管Semicanalis tubae auditivaeである。両管とも後外側方へ伸び、鼓室の前壁に開口する(RK232(左中耳の内側壁および隣接する上壁・下壁・後壁))。

  5. 前庭小管Canaliculus vestibuliは迷路の前庭にある前庭小管前庭口Apertura vestibularis canaliculi vestibuli に始まり、錐体の大脳面で前庭小管内口Apertura interna canaliculi vestibuli(RK229(左側頭骨:内側面))として開口する。

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RK229(左側頭骨:内側面)

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RK232(左中耳の内側壁および隣接する上壁・下壁・後壁)

  1. 蝸牛小管Canaliculus cochleaeは迷路の前庭にある蝸牛小管迷路口Apertura labyrinthica canaliculi cochleaeに始まり、錐体の頭底面で蝸牛小管外口Apertura externa canaliculi cochleaeとなって終わる。

    頚静脈孔内突起の前方の切れ込みと、そこから出て錐体部下面に伸びる溝が(4%の症例で)管を形成することがある。これは"Canalis glossopharyngei"(舌咽神経管)(v. Hayek 1929)と呼ばれ、舌咽神経が通過する。