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目次(IV. 内臓学)

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(図099(胸部と腹部の内臓の位置)図223(胸腔の内臓の位置 I)図343(胸膜腔:前方から開いた図)図346(胸膜洞:胸腔内の3つの漿膜嚢の前頭断)図347(**胸腔の3つの漿膜嚢:**横断面))

心膜は、すべての第1次漿膜と同様に、壁側葉Parietales Blattと臓側葉viscerales Blattに区別される。

この二重の嚢は心臓を完全に包み、弛緩時には円錐形を呈し、その底は横隔膜上面と結合している。先端は鈍円で心膜頂Cupula pericardiiと呼ばれ、上方に向かって心臓の太い血管起始部をその最初の分岐まで包んでいる(図099(胸部と腹部の内臓の位置))。拡張時には心膜は卵形となる。

壁側葉は、その上に線維膜Tunica fibrosaという線維性層が重なり補強している。壁側葉と線維膜は合わせて外心膜Pericardium externumを形成する。つまり、外心膜は内側の漿膜層と外側の線維層からなり、心臓に密接している。

線維性層は丈夫で厚い結合組織性の膜で、線維性結合組織束と弾性線維から構成される。これらの束の特殊な配置により、心膜は拡張性と弾性を有している(Wallraff, J., 1937)。

横隔部Pars diaphragmaticaでは、線維層が横隔膜の腱中心と結合している。ただし、強固な結合は腱中心前縁に沿う横隔膜筋肉部の狭い横走帯状部のみに見られる。心膜頂では線維層が管状に伸び、太い血管の外膜に連続している。

心膜の前壁は胸肋部Pars sternocostalisと呼ばれ、胸骨後面と数本(通常2本)の線維性索、すなわち**(上・下)胸骨心膜索Chordae sternopericardiacae (cranialis et caudalis)によって連結している。上方では椎前筋膜束が心膜と大血管に放散しており、これを上心膜索**Chordae pericardiacae cranialesという。

心膜の右左外側部Partes lateralesは、外側を胸膜の心膜部に覆われている。この心膜部は胸膜の(右左)縦隔部の一部である。そのため、心膜の線維膜は2つの漿膜間に挟まれ、これらの漿膜も心膜の固定に寄与している。心膜の後壁、すなわち後部Pars dorsalisは、線維性結合組織によって食道と胸大動脈にゆるく連結している。ただし、通常は少数の強靱な結合組織索が後部を脊柱に連結している。

正常に拡がった心膜嚢の容量は、Wallraffによると510~800 ccmであり、伸展時には820~1190 ccmに達する。

臓側葉は心外膜Epicardiumと呼ばれ、心臓外表面と大血管起始部を被覆している。心外膜は上行大動脈と肺動脈幹を円形に取り巻き、これらの大血管に共通の短い管状鞘、すなわち動脈漿膜鞘Vagina serosa arteriarum, seröse Arterienscheideを形成している。

臓側葉はまた、上大静脈の一部と4本の肺静脈の一部も被覆している。下大静脈は極めて短い部分のみが心外膜に覆われている。これは、下大静脈が横隔膜を通過後ほぼ直接右心房に達するため、その間に漿膜が入り込む余地が僅かしかないためである。

心臓に連続する血管は、動脈であれ静脈であれ、漿膜によって完全に被覆されているものは一つもない。大動脈と肺動脈では、これら二つが互いに接し、結合組織で連結している細長い部分が漿膜に覆われていない。また、右心房と左心房の一部も心外膜に覆われていない。

したがって、心膜の臓側葉、すなわち心外膜は以下を被覆している:左右心室の自由面、左右心房の大部分、大動脈と肺動脈の表面のうち互いに接していない部分、肺静脈内方部、上下大静脈の開口部近傍。最後に挙げた2つの大静脈からは、留め金状のひだが右心房に達している。

壁側葉が臓側葉に反転する箇所は次の2カ所である。1. 心膜頂:ここから大動脈と肺動脈が出ている(動脈門Porta arteriarum)。2. 静脈の入る部位(静脈門Porta venarum)。後者は横置きのT字形を呈し、1本の縦走脚(上・下大静脈により形成)と1本の横走脚(肺静脈により形成)を有する。

静脈門の横走脚、左心房前壁、大動脈と肺動脈後壁、心膜後壁によって囲まれた空間があり、これを心膜横洞Sinus transversus pericardiiという。ここには左側から容易に指を挿入して到達できる。

心膜横洞上端の左心房に向かう部位で、肺動脈左枝とそれに接する肺静脈との間に心膜が1つのひだを形成している。これは**(左)上大静脈ヒダ**Plica v. cavae cranialis (sinistrae), Wandfalte des Pericardiumsと呼ばれ、血管と神経を包含している。このひだは下方で左心房側面において1本の細い索に移行する。この索は下左肺静脈の周囲を進み、左上大静脈の閉鎖部分を含んでいる。この部分が大心静脈の1小枝を左第1肋間静脈に結合させている。

心外膜の漿膜下脂肪組織が良く発達している場合、切れ込みを持つ大小様々な突起を生じる。これを心膜脂肪ヒダPlicae adiposae pericardiacaeといい、特に心臓表面の大きな溝の部位に存在する。心耳部位にも心外膜がその表面を被覆して形成される小さな突起があり、これを心膜絨毛Villi pericardiciという。

心臓は漿膜嚢内に位置するため、その絶え間ない律動的運動が可能な限り少ない摩擦のもとで行われる。