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上皮小体は1個から4個、またはそれ以上の小体で、通常、甲状腺の外側面と後面に接しており、稀に甲状腺の左右両葉の内部に位置する。扁豆形または卵形で、平均長は8mmであり、特殊な結合組織の被膜に包まれている。一般的に左右それぞれに上下2つの小体があり、これらを上上皮小体・下上皮小体Glandula parathyreoidea cranialis et caudalisと呼ぶ。(日本人の場合、上皮小体が4個あるのは51.9%、3個あるのは33.0%である[執行作弥、福岡医大誌17巻6号、1924]。)
上部の上皮小体は、ほぼ輪状軟骨の下縁の高さで、咽頭と甲状腺両葉の後縁の間の溝に位置する(図225(上下の上皮小体:後方からの視点))。下部のものは同じ溝内で、両葉の下端近くに存在する。
これが典型的な位置だが、特に下上皮小体については様々な位置の変異がある。より外側に移動していることがあり、しばしば下甲状腺動脈と下喉頭神経の前方に位置する。また、甲状腺からかなり離れていることもあり、第8~第10気管軟骨の高さに位置したり、時には気管の前面に付着していることもある。
上皮小体の神経は甲状腺被膜の神経叢に由来する(Braeucker)。
組織学的には(図229(上皮小体の横断図))、上皮小体は上皮網胞索が集合し、分岐して組み合わさったものから構成されている。その間を少量の結合組織を伴う比較的幅広い多数の毛細血管が走行している(図230(上皮小体))。上皮小体の細胞は主細胞と色素好性細胞に分類されるが、主細胞が圧倒的に多数を占める。
主細胞Hauptzellenは通常、明るく原形質に乏しく、外形質性の堅固な細胞壁を持つ。一部の細胞は微細な顆粒を含む原形質を有する。したがって、ほとんど顆粒のない明るい細胞と、顆粒が豊富で濁った細胞とを区別できる。もう一種類の細胞として色素好性細胞oxyphile Zellenがある。この細胞は非常に大きく、暗く見える小さな核を持ち、細胞体全体に粗大な酸好性顆粒が充満していることで主細胞と区別できる。
小胞様構造が散在して観察され、そこでは細胞が大小様々な分泌小滴の周囲に放射状に配列している(図231(上皮小体:25歳男性の小胞形成)、232(新生児の甲状腺と胸腺))。
年齢による差異:顆粒に富む主細胞は高齢者でより多く見られる。色素好性細胞は小児ではほとんど存在せず、10歳を過ぎてから徐々に増加し始める。初めは個々に存在するが、後に群を形成して集まる。いわゆる小胞は加齢とともに増加する。
[図229]ヒトの上皮小体の横断図
[図230]上皮小体:53歳男性。×250倍(A. Kohn による)
[図231]上皮小体:25歳男性の小胞形成(250倍)
*静脈(A. Kohnによる)
[図232]新生児の甲状腺と胸腺(等倍)