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総胆管Ductus choledochusは、総肝管と胆嚢管が合流して形成される。長さは約6~8cmで、肝臓および胆嚢から十二指腸へ胆汁を運ぶ管である(図114(十二指腸と膵臓))。
**局所解剖:**総胆管は小網の肝十二指腸部に包まれて走行し、その際、肝臓へ向かう固有肝動脈および門脈を伴っている(図113(腺腹))。続いて十二指腸下行部の後面内側縁に沿って進み、短い区間で膵臓に包まれる。この時、膵管の右側に接している。膵管とともに十二指腸の筋層を貫き、十二指腸の諸層を1~2cm斜め下方に通過する。これにより十二指腸縦ヒダが形成され、その下端の[大]十二指腸乳頭Papilla duodeni (major)で開口する。開口直前に総胆管は膵管と合流する(十二指腸の項および図114(十二指腸と膵臓)を参照)。
総肝管(Ductus hepaticus)は、肝臓の左右両葉からの胆汁を導出する管である。左右1本ずつの幹が肝門に出てきて、ここで鈍角をなして互いに合流することで形成される。こうしてできた総肝管は4~6cmの長さと4mmの太さを持ち、小網の肝十二指腸部の中を右方かつ下方に進む。その後、胆嚢から出てきた胆嚢管と鋭角をなして合流し、総胆管となる。
肝臓の内部における総肝管の枝(intrahepatische Gallengänge)は門脈の分枝に伴っている。総肝管を形成する左の幹は左葉と方形葉から胆汁を導き、尾状葉の一部からも導く。右の幹は右葉のほか尾状葉の一部から胆汁を導出する。
肝臓内の胆管は横断面が円形ではなく楕円形である。その角の部分から細い枝が2列をなして側方に出ている(Hjortsjö, Acta anat., 11. Bd., 1951)。
胆嚢管Ductus cysticusは長さ3~4cmで、左下方に走行し、胆嚢の方向とある角度をなして総肝管と合流し、総胆管となる。
総胆管・総肝管・胆嚢管および肝臓内の比較的太い胆管の粘膜表面には、胆管粘液腺Gallengangdrüsenの開口として小さな陥凹(胆管小窩Gallenganggrübchen)が見られる。胆嚢Vesica fellea, Gallenblaseは西洋梨の形をした膜性の袋で、長さ8~12cm、最大幅4~5cmである。山口寛(邦人胆系の局所解剖知見、解剖学雑誌3巻、191~229、1930)によれば、日本人の平均は胆嚢長8.6cm、幅3.8cm、胆嚢管長2.8cm、総肝管長3.2cm、総胆管長6.7cmである。容積はおよそ30~50mLである。胆嚢体Corpus vesicae felleaeは肝臓の胆嚢窩内に位置する。胆嚢底Fundus vesicae felleaeは下前方かつ右に向かい、肝臓の前縁を越える。一方、胆嚢頚Collum vesicae felleaeはその反対側にある。胆嚢は結合組織によって胆嚢窩に付着している。その自由面は腹膜の一部である胆嚢漿膜Tunica serosa vesicae felleaeで覆われ、この膜は肝臓から胆嚢表面に移行する。この漿膜が通常よりも深く入り込む場合、短い腸間膜状となることがある。胆嚢頚は徐々に細くなって胆嚢管に移行し、その部位で通常2つのらせん状の屈曲を形成する。
胆嚢は上述のように不完全な漿膜に覆われるほか、比較的薄い2層の筋層Tunica muscularis vesicae felleaeと粘膜Tunica mucosa vesicae felleaeを有する(Schreiber, H., 1939)。粘膜には多数の小さなひだがあり、細かい格子状を呈する(Plicae reticulares tunicae mucosae、粘膜の網状ヒダ)。胆嚢頚ではこの格子状ひだが消失し、代わりに横走するひだが現れる。これらが連続してらせん状のひだ、すなわちらせん弁Valvula spiralisを形成することがある。このらせん弁が胆嚢管内にかなり遠くまで伸展することもある。
胆嚢の局所解剖
**I. 全身に対する位置関係:**胆嚢は上腹部の内側部で、右の肋骨弓の縁に隣接している。
**II. 骨格に対する位置関係:**胆嚢底は右腹直筋の外側縁が第8または第9肋軟骨と形成する角に位置している。
**III. 近接器官との位置関係:**胆嚢体は肝臓と癒着しており、胆嚢底部は右結腸曲に、頚部は十二指腸上部に接している。
胆嚢と総胆管は1つの係蹄を形成し、その頂点は上方に向かい、胆嚢管に相当する。係蹄の前脚は胆嚢、後脚は総胆管である。H. Schreiber(Klin. Wochenschr., 1943)によると、内容物が充満しているとき、若年および中年の男性では胆嚢底が多くの場合十二指腸乳頭より1~2cm上方にあるが、稀に乳頭より下方にあることもある。
**変異:**胆嚢が欠如することがある。その場合、総肝管の一部が拡張したり、肝臓内に広がったりする。胆嚢の形態異常もみられ、横方向や稀に縦方向にくびれることがある。肝臓と胆嚢間の細い胆管による直接連絡(肝胆嚢管Ductus hepatocystici)は多くの動物では正常だが、人間でも時折観察される。肝臓の左右両葉から出る総肝管が長距離にわたって分離したまま十二指腸に向かうこともある。また、総胆管が膵管とは別々に十二指腸に開口することもある。