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網膜の基本構造
主要層の構成
支持組織構造
視神経乳頭から鋸状縁までの網膜は多数の層によって構成されている(図630(ヒトの網膜視部の横断面))。外方から内方へと観察すると、既述の色素上皮層に続いて、杆状体Stäbchenと錐状体Zapfenの層が存在する。表面に平行して外境界膜Membrana limitans externaという薄膜があり、横断面では鮮明な線として観察される。この膜は杆状体と錐状体を外顆粒層äußere Körnerschichtから区分している。外顆粒層は杆状体と錐状体の層の一部であり、その核を含む部分である。外顆粒層と杆状体錐状体層は合わさって視細胞層Schicht der Sehzellenという一つの統合された層を形成している。
これは視細胞からなる神経上皮Neuro-Epithelであり、核のない部分が杆状体錐状体層、核を含む部分が外顆粒層となっている。
網膜の外方主要部であるこの上皮性部分に続き、内方主要部は外網状層äußere, retikuläre Schichtから始まる。その内側には、より厚い内顆粒層innere Körnerschichtがあり、さらに内側に内網状層innere retikuläre Schichtが位置する。次いで多極性の大型神経細胞からなる神経細胞層Ganglienzellenschichtがあり、網膜の大部分で単層を形成する。最も内側には淡色の神経線維層Nervenfaserschichtがあり、これは乳頭から鋸状縁へと徐々に薄くなる。網膜は硝子体に面する内面を内境界膜Membrana limitans internaという特殊な膜で区切られている。第2の主要部(内方主要部)は神経上皮(外方主要部)に対して網膜の脳層Cerebralschichtとも呼ばれる。神経上皮は脳室の上衣Ependymに相当し、脳層は灰白質と白質に対応する。白質は皿状の網膜の凹面に沿って存在する。網膜の血管は内方主要層にのみ分布し、外方主要層には及ばない。
網膜には支持組織Stützgewebeが豊富に存在し、特異な構造を示す。これは視細胞や神経細胞と同じ起源を持つが、異なる方向に分化した網膜のグリアである。この支持物質には様々な構成要素があるが、最も特徴的なのは網膜を放射状に貫き、外方主要層まで深く入り込む剛直な線維である。これは放線線維Radialfasern、支持線維Stützfasern、ミュラー線維Müllersche Fasernと呼ばれ、網膜内面で円錐状に膨らんで始まる。この膨らみ、すなわち放線線維円錐Radialfaserkegelの底面は内境界膜に位置し、各円錐の底面が密着してモザイク状を形成する。底面は小皮縁kutikulare Säumeを形成して縁が厚くなり、硝子体との境界となる。円錐の先端部は神経線維層・神経細胞層・内網状層を貫通し、内顆粒層では平板状の微細な線維性突起を様々な方向に伸ばす。外顆粒層では散在する細い線維と線条に分かれ、最後に篩状の外境界膜Membrana limitans externa(この膜自体も放線線維の産物)と結合する(図632(クローム銀染色による網膜の放線線維))。
外境界膜はその表面から多数の細い突起を杆状体や錐状体の基底部の間へ送り出しており、これがいわゆるFaserkörbe(線維のかご)である。内顆粒層では各放線線維(これはグリア細胞に他ならない)が1つの核を持つ。放線線維は網膜の中央部より周辺部でより密集しており、黄斑では痕跡的な形成を示すのみである。
以上で網膜の構成についての概観が得られたので、次にそれぞれの層の特徴をより詳しく述べることにする。黄斑はかなり特殊な構造を持つため、網膜全体を広い黄斑外周部と小さい黄斑部とに分けて検討する。