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目次(III. 脈管系)

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心臓の栄養を担う脈管については後に詳述するが、ここでは重要な点を概説する。2本の冠状動脈は、他の脈管壁を養う血管と同様の原則に従い、心臓自体からではなく、心臓から出る動脈の本幹である大動脈から、その最初の枝として分岐している(RK633(心臓の血管:胸肋面))。

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RK633(心臓の血管:胸肋面)

心臓のリンパ管は非常に豊富である。外側および内側の表面にあるリンパ管網は、筋束や血管の間のすべての間隙に存在する深部リンパ管系と連結している(Sappey, RK631(ヒトの心臓のリンパ管:胸肋面) )。特殊な壁(内皮)を持つリンパ管が心筋層の内部および表面に存在する。心臓のリンパは、わずか2本(右と左それぞれ1本)の太い幹に集約され、前縦隔リンパ節に至る。これらの2本のリンパ管は、心臓の左右それぞれの半分から発し、左右の冠状脈に沿って走行する。右の幹は大動脈弓の左面(前面)を、左の幹はその右面(後面)を通過する。

心臓神経叢から心臓壁に至る神経は、器官の大きさに比べて細い。神経は迷走神経と、交感神経の3つの頸神経節および胸神経節の最初の5つ(時には6つ)の神経節から出ている(Braeucker, 1927)。心底には比較的大きな神経節があり、さらに心臓内部を中心に、神経の走行途中に比較的小さな神経節も存在する。

心筋の神経は脈管のすぐそばにあるが、独立して走る神経束もある。神経は粗大な網目状の神経叢を形成していると考えられる。神経叢から出る神経線維は、さらに筋線維の間に終末神経叢を作る。これは非常に細い無髄線維からなり、筋線維に密接している。ヒトの心筋線維における神経終末装置は、現在までまだ確認されていない(第II巻,図569(ヒトの心室筋における神経) )。

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図569(ヒトの心室筋における神経)

哺乳類の心内膜には、次のような神経叢が区別されている:1. 広い網目を持つ心内膜下の神経叢、2. 1つないし2つの心内膜固有の神経叢、3. 内皮下の神経叢(Al. Smirnow, 1895)。有髄線維は無髄線維に比べて数が少ない。有髄線維とその側枝は知覚性の分岐パターンを示し、心内膜の様々な深さで終わっている。

Smirnow, A. E., Anat. Anz., 18. Bd., 1900. Ph. Stöhr jr., Handb. mikr. Anat., 4. Bd.

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[図631] ヒトの心臓のリンパ管:胸肋面(2/3倍)

(Ph. C. Sappey による)