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目次(IV. 内臓学)

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腎乳頭は管状の膜性の袋、すなわち腎杯(Calices renales, Nierenkelche)によって包まれている。腎杯は乳頭の底部に位置している。通常、腎杯は1個の乳頭を包んでいるが、しばしば2個の乳頭、時には3個の乳頭が1つの腎杯に包まれることがある。

腎杯は腎盂(Pelvis renalis [Pyelum], Nierenbecken)に開口し、腎盂は尿管(Ureter, Harnleiter)へと移行する(図240(腎臓、腎盂、および複数の腎杯の前額断面)図243(腎乳頭の断面図:尿細管に染料が注入されている)図263(短い中間部を持つ広い袋状の腎盂)、264(長い中間部を持つ管状の腎盂)図265(**腎盂と尿管:**X線写真による腎盂像))。

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図240(腎臓、腎盂、および複数の腎杯の前額断面)

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図243(腎乳頭の断面図:尿細管に染料が注入されている)

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図263(短い中間部を持つ広い袋状の腎盂)、264(長い中間部を持つ管状の腎盂)

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図265(**腎盂と尿管:**X線写真による腎盂像)

腎盂の形状は多様で、短い腎杯を持つ広い袋状のものから、比較的長い中間部を持つ管状のものまでさまざまである(図263(短い中間部を持つ広い袋状の腎盂)、264(長い中間部を持つ管状の腎盂))。

すべての腎杯が直接腎盂に開口しているわけではない。しばしば2つ以上の腎杯が合流して共通の中間部(Zwischenstück、以前は大腎杯Calix majorと呼ばれた)を形成し、これが腎杯と腎盂をつないでいる。

腎盂の大きさ:最大幅の平均は1.5〜2.0cmで、長さは通常幅よりやや大きい(図240(腎臓、腎盂、および複数の腎杯の前額断面))。

変異:中間部が2つある場合や、上・中・下の3つの中間部がある場合もある。時に中間部が形成されず、腎杯が直接腎盂に移行することがある。また、中間部が分離したまま2本の尿管が出ている例も見られる(約1.5%)。

これら2本の尿管は、早晩合流して膀胱に開口するが、時に別々に開口することもある。あるいは1本が膀胱に開口し、もう1本が膀胱よりも下方で開口する場合もある。膀胱に開口する2本の尿管のうち、下方に開口するものが上方の腎杯から出ていることがある。極めてまれに、1側に3本の尿管が存在する例も報告されている。

尿管は前後方向にやや扁平な管で、その直径は4〜7mmである。

尿管は小骨盤の入口に向かって下方かつ内側に走行し、小骨盤内で前方かつ内側に湾曲して膀胱底の側面に至る(図166(十二指腸・膵臓・脾臓および後腹壁の諸器官の自然な位置を示す図))。このため、腹腔部(Pars abdominalis)と骨盤部(Pars pelvina)に区分される。尿管はその全経過にわたって腹膜の直下を走り、疎性結合組織によって隣接器官に固定されている。

尿管の長さは個人差が大きく、左右で異なるのが一般的である。男性の尿管の長さは右が290mm、左が303mmであり、女性は右が282mm、左が292mmである。大骨盤と小骨盤の境界では屈曲が見られる。(日本人の尿管の平均長は、男性では右29.8cm、左30.6cm、女性では右28.9cm、左30.1cmである[喜多, 日本外科宝函7巻]。)

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図166(十二指腸・膵臓・脾臓および後腹壁の諸器官の自然な位置を示す図)

局所解剖:尿管は腰筋膜上に位置し、腰筋の中央部下方で精巣動静脈が尿管の前方を外側に走行してこれと交差する。

右尿管は下大静脈に密接している。さらに下方では、尿管は太い総腸骨動静脈の分岐部上を通過する。この際、右尿管は回腸末端部の後方に、左尿管はS状結腸の後方に位置する。小骨盤内では腹膜に被われ、膀胱動脈索上を通過して膀胱側方に進み、膀胱に密接して前下内側に走行し膀胱底に至る(図265(**腎盂と尿管:**X線写真による腎盂像)図270(男性の膀胱、尿管、精嚢、前立腺、尿道:後方からの図))。

Waldeyerによると、右尿管は左に比べて正中線からやや離れている。そのため、一般に右尿管は比較的下方で腸骨動脈と交差する。このことから、右尿管は外腸骨動脈の前方に位置することが多く、左尿管は総腸骨動脈の前方に位置することが多い。また、総腸骨動静脈の分岐部の位置によってもこの位置関係は変化する。

男性では精管が尿管と膀胱の間を内側かつ下方に進む。女性では尿管は膀胱底に達するまでに子宮頸部と腟円蓋の側面近くを通過する。子宮動脈は尿管上を横走して子宮頸部に至る。左右の尿管は膀胱底で互いに4〜5cm離れて、その壁を斜めに内側かつ下前方に貫通する。この際、約2cmの長さにわたって壁内を通過する。尿管の開口部は尿管口(Orificium ureteris、図267(男性の膀胱の内面(強度収縮時)と尿道))と呼ばれ、狭い隙間状の裂隙である。男性では常に前立腺の後上縁から約3cm離れた位置にある。

まれに膀胱の一側に2本の尿管が別々に開口することがあるが、その場合、開口部は互いに近接している。