c)肺のリンパ管は浅層と深層に分かれている。浅層のリンパ管は胸膜直下で豊富な網を形成し、その網目は血管網の間に存在する。深層のリンパ管は血管分枝に沿って肺門に至り、そこで少数の肺リンパ節(Lymphonodi pulmonales)と気管支肺リンパ節(Lymphonodi bronchopulmonales)を通過して浅層からのリンパ管と合流する。その後、肺門から気管分岐部までの間にある多数の気管支リンパ節(Lymphonodi bronchales)を通過し、各側でそれぞれ数本の小幹となる。その中で通常、1本のかなり太い気管支縦隔リンパ本幹(Truncus bronchomediastinalis)が存在する。これらの幹は気管に沿って頚部下部に至り、左側は胸管に開口し、右側は右リンパ本幹に注ぐ。気管分岐部では、その3つの角に上気管気管支リンパ節、下気管気管支リンパ節(Lymphonodi tracheobronchales craniales, caudales)が存在する。

肺の下葉から少数のリンパ管が後縦隔リンパ節に到達している。

気管支リンパ節は体内で最大級のリンパ節に属する。若年時には他のリンパ節と同様に赤みを帯びているが、その後徐々に色素が沈着し、暗灰色ないし黒色を呈するようになる。つまり、肺と同様の色調変化を示すのである(内臓学参照)。また、石灰化や乾酪化といった変化が、他の部位のリンパ節よりも頻繁に、かつ高度に観察される。

d)心臓のリンパ管RK725(頭部、頚部、胸部のリンパ管))は心臓壁に分布する血管に沿って走行し、各側で1本の小幹がそれぞれ複数の細いリンパ管の合流によって形成される(RK631(ヒトの心臓のリンパ管:胸肋面)も参照)。

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RK725(頭部、頚部、胸部のリンパ管)

右側の小幹は大動脈に接する部位で少数の固有心リンパ節(Lymphonodi cordis proprii、Bartels)を通過し、大動脈弓の上を越えて気管に至り、気管に沿って進み右リンパ本幹に流入する。左側の幹は肺動脈に沿って上行し、肺動脈分岐部と大動脈弓の間を通過して、そこにある前縦隔リンパ節に到達する。ここから出る輸出管が胸管に開口する。なお、Rainer, Ann. Biol., Vol.1, 1911も参照のこと。

e)食道の下1/3のリンパ管上胃リンパ節(Lymphonodi gastrici craniales)に流入し、1/3は気管支リンパ節と後縦隔リンパ節に、1/3は深頚リンパ節に至る(Sakata)。

f)胸腺のリンパ管は多数存在し、それらが2本の主要なリンパ管に集約され、血管とともに走行して左右のリンパ本幹に流入する。