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目次(VI. 感覚器)

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平衡覚と聴覚の刺激を感受する部分は、体表面の皮膚、特に表皮の一領域が奥深いところへ陥入して生じたものであり、ここに第8脳神経の線維群が終末している。この表皮片は、到達する神経の大きさに比べて著しく小さく、元々は小脳と延髄の境界部にあったが、胎生早期に頭部表皮の下へ陥入し、西洋ナシ形の単純な小胞を形成した後、他の表皮部分との連絡を完全に失う。その後、この小胞は発生過程を経て形態を変え、図665に示すような複雑な完成型となる。この器官の内部には内リンパという液体が存在し、その壁は発生起源となった上皮が発達したものである。外皮と同様に、結合組織性の要素が上皮に付着しており、これが器官全体を支持し、同時に脈管や神経を導いている。この器官は複雑な形態から膜迷路と呼ばれ、後部が平衡覚を、前部が聴覚を司る。

膜迷路は側頭骨の錐体乳突部内の骨迷路に収まっている。骨迷路は膜迷路と類似した形態だが、より大きく、やや単純な形状の骨室である。膜迷路の一小部分のみが骨迷路から突出しており、これが内リンパ嚢Saccus endolymphaceus、すなわち迷路陥凹Recessus labyrinthiである。脊椎動物の中には、この部分が顕著に発達し、頭蓋腔および脊柱管のかなりの空間を占めるものも少なくない。

これら両部分からなる迷路内耳とも呼ばれ、その外側にはより大きな第二の嚢が存在する。これは頭腸Kopfdarmに属する広い粘膜嚢で、一端は生涯にわたって咽頭腔に開口し、他端は拡大して袋状に終わっている。この構造全体が耳管鼓室嚢Tuben-Paukensäckchenであり、腸管憩室の一種である。出生後まもなく、耳管鼓室嚢は鼻腔と咽頭腔から空気を取り入れる。この空気を含む腔が鼓室であり、耳管を介して咽頭腔と交通している。鼓室と耳管を総称して中耳という。その位置関係は図666に明確に示されており、図中では切開された耳管が露出した鼓室(骨迷路の外側)に連続している。鼓室小骨は一見鼓室内に存在するように見えるが、実際には鼓室内に突出しているだけで、鼓室粘膜に覆われている。三つの鼓室小骨は鰓弓骨格に由来する。

鼓室の外側壁には、頭部外面から始まる明瞭な管が接続している。この管が外耳道である。外耳道の外側端には音を集める杯状の耳介が付着しており、両者が一体となって漏斗状の外耳を形成している。外耳と中耳の内腔は薄い鼓膜によって隔てられており、これは頭部壁の一部が著しく薄化したものである。内耳が第8脳神経の支配を受けるのに対し、外耳と中耳は音波を受容・伝導して内耳へ伝達するという重要な役割を担っている。

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[図665]膜迷路とそれに神経の終末が存在する場所(模型図)×2