皮下組織は、皮膚の最深層に位置し、真皮と深部の筋膜・筋肉などの構造物との間を埋める疎性結合組織です(Gray and Williams, 2015)。この組織は主に脂肪細胞(adipocytes)で構成され、これらの細胞は膠原線維(collagen fibers)の網目状構造内に大小の集団(lobules)として存在しています。組織学的には、密に詰まった脂肪細胞と、それらを囲む細い結合組織性の隔壁(septa)が特徴的です(Ross and Pawlina, 2016)。
皮下組織の解剖学的構造は部位によって異なり、顔面や手掌、足底では比較的薄く、腹部や臀部、大腿では厚くなります(Standring, 2020)。また、性差も顕著で、女性では一般に皮下脂肪が多く、特に下腹部、臀部、大腿に発達しています。皮下組織には浅層(superficial layer)と深層(deep layer)があり、浅層は脂肪細胞が密集し、深層は疎性結合組織が主体となっています。これらの層の間にはScarpa筋膜(fascia of Scarpa)のような筋膜構造が存在する部位もあります(Moore et al., 2018)。
皮下組織の生理学的機能は多岐にわたります(Freinkel and Woodley, 2001):
皮下組織の血管構造は特徴的であり、動脈は皮下組織と網状層(reticular layer)の移行部に皮膚表面と平行に走行し、皮下動脈網(subcutaneous arterial plexus)を形成します(Braverman, 2000)。ここから分岐した動脈枝は、上行枝として真皮へ、下行枝として皮下組織深部へと分布します。真皮に入った動脈は乳頭層(papillary layer)の基底部で乳頭下動脈網(subpapillary arterial plexus)を形成し、さらに乳頭内に毛細血管ループ(capillary loop)を送ります。静脈系は毛細血管から始まり、乳頭基底部の静脈に集まった後、網状層内で静脈網を形成し、最終的に皮下静脈叢(subcutaneous venous plexus)に合流します(Imanishi et al., 2010)。
皮下組織には豊富な神経支配があり、特に感覚神経終末が発達しています(McGrath et al., 2010)。圧覚を感知するマイスナー小体(Meissner's corpuscles)や、振動覚を担当するパチニ小体(Pacinian corpuscles)が散在しています。また、温度感覚を伝えるルフィニ終末(Ruffini endings)や自由神経終末(free nerve endings)も存在します。自律神経系は血管の収縮・拡張を調節し、体温維持に関与します(Nolano et al., 2013)。
臨床的観点では、皮下組織は様々な病態と関連しています(Bolognia et al., 2017):