ラセン孔列 Tractus spiralis foraminosus
ラセン孔列は、内耳の聴覚伝導路における重要な解剖学的構造です。詳細な解剖学的特徴と臨床的意義は以下の通りです(Nakashima et al., 2012):
解剖学的特徴
- 内耳道底部の前下部に位置し、らせん状に配列した多数の小孔(微小孔)の集合体です(Gray and Williams, 2015)
- これらの小孔は蝸牛軸の基底部から蝸牛頂に向かってらせん状に配列しています
- 各小孔は蝸牛神経節(らせん神経節)の双極性ニューロンの中枢性突起が通過する通路となっています(Netter, 2018)
- 解剖学的には骨性迷路の一部であり、側頭骨岩様部内に位置しています
- らせん板に向かう神経線維束に対応して、小孔は大きさと形状が異なります
組織学的特徴
- 各小孔は直径約100〜300μmの管状構造で、蝸牛神経線維束を包んでいます(Schuknecht, 2010)
- 小孔を通過する神経線維は有髄神経線維であり、シュワン細胞に覆われています
- らせん神経節細胞の中枢性軸索は、これらの小孔を通って脳幹に向かい、蝸牛神経を形成します(Webster and De Ribeaupierre, 2014)
臨床的意義
- 側頭骨骨折が内耳道に及ぶと、ラセン孔列を通過する神経線維が損傷し、感音性難聴を引き起こす可能性があります(Jackler and Kaplan, 2013)
- 聴神経腫瘍(前庭神経鞘腫)は内耳道内で成長すると、ラセン孔列を圧迫し、進行性難聴の原因となります(Ogawa et al., 2016)
- 先天性内耳奇形では、ラセン孔列の発達異常が聴覚障害と関連することがあります
- 高齢化に伴う蝸牛神経線維の変性は、ラセン孔列を通過する神経線維数の減少につながり、加齢性難聴に寄与します(Merchant and Nadol, 2010)
ラセン孔列は聴覚伝導路の重要な構成要素であり、蝸牛有毛細胞からの音響情報を脳幹の蝸牛神経核へ伝達するための解剖学的経路を提供しています。この構造の障害は様々な聴覚病理と関連しており、側頭骨画像診断において重要な指標となります(Dahlen et al., 2011)。
参考文献
- Gray, H. and Williams, P.L. (2015) Gray's Anatomy: The Anatomical Basis of Clinical Practice — 内耳の詳細な解剖学的記述と図解を提供する標準的な解剖学書