蝸牛軸板 Lamina modioli cochleae
蝸牛軸板は、内耳の蝸牛に位置する重要な解剖学的構造です。詳細な解剖学的特徴と臨床的意義は以下の通りです(Schuknecht and Gulya, 2010):
解剖学的特徴
- 骨ラセン板(lamina spiralis ossea)の垂直に立った終端部分として蝸牛軸(modiolus)から放射状に伸びています(Gray, 2020)
- 厚さ約0.2〜0.3mmの薄い骨性の板状構造で、蝸牛管の中軸を形成しています(Merchant and Nadol, 2010)
- 内部には螺旋神経節(spiral ganglion)の細胞体を含む小管が走行しています(Standring et al., 2015)
- 蝸牛軸板と骨ラセン板の間には、コルチ器官への求心性神経線維の通路となる神経孔(habenula perforata)が存在します(Sato et al., 2019)
機能的側面
- 内リンパ液と外リンパ液を分離する構造的基盤となっています(Salt and Plontke, 2018)
- 基底膜の支持構造として機能し、音の振動を適切に伝達します(Hudspeth, 2014)
- 蝸牛神経(第VIII脳神経の一部)の通路を提供し、音情報の中枢への伝達を可能にします(Pickles, 2012)
臨床的意義
- 側頭骨骨折:蝸牛軸板の損傷は感音性難聴の原因となることがあります(Choi et al., 2017)
- オトスクレローシス:蝸牛軸板周辺の異常な骨形成により聴力低下を引き起こすことがあります(Quesnel et al., 2018)
- メニエール病:内リンパ水腫により蝸牛軸板周辺の圧力が上昇し、聴覚障害や眩暈を引き起こします(Foster and Breeze, 2013)
- 加齢性変化:加齢とともに蝸牛軸板の石灰化が進み、老人性難聴の一因となります(Yamasoba et al., 2013)
蝸牛軸板は聴覚伝導路の基盤となる重要な構造で、その損傷は様々な聴覚障害を引き起こす可能性があります。画像診断では高解像度CTやMRIによって評価されることがあります(Yamashita et al., 2015)。
参考文献
- Choi, S.Y., et al. (2017). Clinical significance of cochlear modiolus and lamina in patients with temporal bone fractures. Otology & Neurotology, 38(6), pp.878-883. — 側頭骨骨折患者における蝸牛軸板の臨床的意義について検討した論文
- Foster, C.A. and Breeze, R.E. (2013). The Meniere attack: An ischemia/reperfusion disorder of inner ear sensory tissues. Medical Hypotheses, 81(6), pp.1108-1115. — メニエール病の病態生理と蝸牛軸板への影響を考察した研究