蝸牛軸 Modiolus cochleae
蝸牛軸は内耳の蝸牛における中心的な解剖学的構造で、以下のような特徴と重要性を持ちます(Gulya et al., 2020):
解剖学的特徴
- 側頭骨の錐体部の長軸に対してほぼ直角に位置する多孔性の円錐形または紡錘形の骨性中軸構造です(Schuknecht, 1993)
- 高さ約3mm、底部の直径約1mmで、螺旋状に巻いた蝸牛管の中心軸を形成しています(Anson and Donaldson, 1981)
- 蝸牛ラセン管がこの中軸を基底回転から頂回転まで2回半から2回3/4回のラセン状に取り囲んでいます
- 螺旋状の蝸牛神経線維束が通過する複数の小孔(蝸牛軸孔)を含んでいます(Spoendlin and Schrott, 1989)
組織学的構造
- 蝸牛軸は緻密骨と海綿骨からなり、内部には蝸牛神経節(らせん神経節)が位置しています(Nadol, 1988)
- 蝸牛軸の中心には縦走する中心管があり、その周囲を螺旋状に上行する蝸牛軸管が取り巻いています(Merchant and Nadol, 2010)
- これらの管には血管や神経が通っており、コルチ器官への栄養供給と神経支配を担っています(Axelsson, 1988)
機能的意義
- 蝸牛神経の細胞体(双極性神経細胞)を含むらせん神経節の支持構造として機能します(Brown et al., 1988)
- 蝸牛軸から延びる骨性ラセン板(osseous spiral lamina)は基底膜の内側支持構造となり、コルチ器官の位置決めに寄与します(Pickles, 2012)
- 音の周波数弁別において重要な役割を果たす蝸牛の「トノトピー(周波数局在)」構造の基盤となっています(Raphael and Altschuler, 2003)
臨床的意義
- 蝸牛軸の損傷や変性は感音性難聴を引き起こす可能性があります(Makary et al., 2010)
- 耳硬化症では蝸牛軸周辺の骨化が進行し、聴力低下を引き起こすことがあります(Cureoglu et al., 2010)
- 人工内耳埋込術において、電極アレイは蝸牛軸に近接する鼓室階に挿入されます(Shepherd et al., 1993)
- 先天性内耳奇形(モンディニ型奇形など)では蝸牛軸の形成不全が見られることがあります(Sennaroglu and Saatci, 2002)