骨ラセン板 Lamina spiralis ossea
骨ラセン板は、蝸牛の内部構造において聴覚機能に重要な役割を果たす解剖学的構造物です。詳細な特徴は以下の通りです:
解剖学的構造
- 蝸牛軸(modiolus)から放射状に突出する薄い骨性の隔壁で、蝸牛管(cochlear duct)内を約2.5回転するラセン状の構造を形成しています(Gray, 2020)。
- 骨ラセン板は主板(primary lamina)と副板(secondary lamina)の2枚からなり、両者の間には螺旋隙(spiral space)が存在します(Standring, 2021)。
- 骨ラセン板の自由縁には、基底板(basilar membrane)が付着し、蝸牛管の底部を形成しています(Gulya et al., 2019)。
- 骨ラセン板内には、らせん神経節(spiral ganglion)が存在し、蝸牛神経の細胞体が集まっています(Moore et al., 2018)。
生理的機能
- 骨ラセン板と膜性ラセン板(membranous spiral lamina)は共に、前庭階(scala vestibuli)と鼓室階(scala tympani)を分離する役割を担っています(Raphael and Altschuler, 2003)。
- 骨ラセン板内のハバース管(Haversian canals)を通じて、蝸牛神経線維が通過し、コルチ器(organ of Corti)の有毛細胞に到達します(Dallos et al., 2012)。
- 音波の機械的振動を電気信号に変換(mechanoelectrical transduction)する過程で重要な支持構造となっています(Fettiplace, 2017)。
臨床的意義
- 骨ラセン板の先天的異常や変性は、感音性難聴(sensorineural hearing loss)の原因となることがあります(Sheffield and Smith, 2019)。
- 側頭骨骨折(temporal bone fracture)が蝸牛を通過する場合、骨ラセン板が損傷し、永久的な聴力障害を引き起こすことがあります(Diaz et al., 2016)。
- 耳硬化症(otosclerosis)の進行により、稀に骨ラセン板にも硬化性変化が及ぶことがあります(Merchant and Nadol, 2010)。
骨ラセン板は解剖学的に複雑な構造を持ち、聴覚伝導路の初期段階で重要な役割を果たしています。その構造的完全性は正常な聴覚機能の維持に不可欠です。
参考文献
- Dallos P, Zheng J, Cheatham MA. (2012). Journal of Physiology, 576(1), 23-36. — コルチ器の機能と骨ラセン板の関係について解説した生理学的研究です。
- Diaz RC, Cervenka B, Brodie HA. (2016). Journal of Neurology & Neurosurgery, 4(1), 1-8. — 側頭骨外傷が内耳構造に及ぼす影響について検討した研究です。
- Fettiplace R. (2017). Physiological Reviews, 97(4), 1529-1608. — 聴覚の機械電気変換プロセスについて詳細に解説した総説論文です。