外側半規管 Canalis semicircularis lateralis
外側半規管は、内耳の迷路の重要な構成要素で、三半規管のうちの1つです。解剖学的構造と機能について詳細に説明します(Drake et al., 2020; Standring, 2016):
解剖学的特徴
- 位置:水平面に対して約30度の角度で配置され、三半規管の中で唯一水平に近い位置にあります(Moore et al., 2018)
- 形態:円形の管状構造で、直径約0.8mmの膜迷路が約1.5mmの骨迷路内に浮遊しています(Netter, 2019)
- 骨学的特徴:岩様骨内に位置し、時には鼓室内側壁へのプロミネンス(水平半規管隆起)を形成します
- 構造:一端に膨大部(ampulla)があり、もう一端は単脚として前庭に開口します(Schuknecht, 1993)
- 微細構造:膨大部には感覚上皮(膨大部稜)があり、感覚毛を持つ有毛細胞と支持細胞から構成されています(Ekdale, 2016)
機能的特徴
- 平衡感覚:水平面における頭部の回転運動(ヨー運動)を主に感知します(Baloh and Honrubia, 2001)
- 内リンパ液:内部には内リンパ液が満たされ、頭部の動きに応じて流動します
- 前庭神経:外側半規管膨大部からの感覚情報は、上前庭神経を通じて脳幹に伝達されます(Brödel, 1946)
- 眼球運動:前庭動眼反射を介して、水平方向の眼球運動の制御に関与します(Leigh and Zee, 2015)
臨床的意義
- 良性発作性頭位めまい症(BPPV):特に外側半規管型BPPVは、耳石器から遊離した耳石が外側半規管に迷入することで発症します(Bhattacharyya et al., 2017)
- 瘻孔症状:中耳炎や真珠腫による骨破壊で外側半規管瘻孔を生じ、圧刺激でめまいが誘発されることがあります(Minor, 2005)
- 半規管麻痺:前庭機能検査の一つであるカロリックテスト(温度刺激検査)では、主に外側半規管の機能を評価します(Barber and Stockwell, 1980)
外側半規管は、前半規管および後半規管と協調して働き、三次元空間における頭部の動きを感知し、平衡感覚の維持と空間定位に不可欠な役割を果たしています。特に水平回転運動の検出に特化しており、姿勢制御と視覚安定化の重要な要素となっています(Highstein et al., 2004)。
参考文献
- Baloh, R.W. and Honrubia, V. (2001) Clinical Neurophysiology of the Vestibular System. Oxford University Press. — 前庭系の臨床神経生理学に関する包括的な解説書