粘膜(耳管の)Tunica mucosa tubae auditivae
耳管(咽頭鼓室管)の粘膜は、中耳腔と鼻咽頭をつなぐ管状構造の内壁を覆う組織です。解剖学的観点から、この粘膜は複雑な構造と重要な機能を持っています(Proctor, 2012)。
解剖学的特徴
耳管粘膜は以下の層構造で構成されています(Bluestone and Doyle, 1988):
- 上皮層:偽重層線毛円柱上皮(respiratory epithelium)で、線毛細胞と杯細胞が分布しています
- 基底膜:上皮と粘膜固有層を分ける薄い層
- 粘膜固有層(lamina propria):
- 浅層:疎性結合組織で血管が豊富
- 深層:より密な結合組織
- 粘膜下層:耳管腺(tubotympanic glands)を含み、粘液と漿液性分泌を行います
機能的意義
耳管粘膜は以下のような重要な生理学的機能を担っています(Sade and Ar, 1997):
- 中耳腔の換気:咽頭と中耳の間の気圧を均等化させ、鼓膜の正常な振動を維持
- 保護機能:中耳への病原体の侵入を防ぐバリアとして機能
- 排泄機能:中耳腔内の分泌物や老廃物を咽頭側へ排出する経路を提供
- 粘液クリアランス:線毛運動により中耳から鼻咽頭方向への粘液の移動を促進
臨床的意義
耳管粘膜は臨床的に重要な役割を持ち、以下の病態に関連しています(Poe et al., 2000):
- 中耳炎:耳管機能不全により中耳腔の陰圧が生じ、滲出性中耳炎や急性中耳炎の原因となります
- 耳管狭窄症:粘膜の炎症や浮腫により耳管内腔が狭小化し、耳閉感や難聴の原因となります
- アレルギー性鼻炎:アレルギー反応による粘膜腫脹が耳管機能に影響を及ぼします
組織学的には、耳管粘膜は咽頭側から鼓室側に向かうにつれて徐々に変化し、線毛上皮から単層立方上皮へと移行していきます(Hentzer, 1970)。また、粘膜下には豊富なリンパ組織(tubal tonsil)が存在し、免疫防御の役割を担っています。これらの構造が協調して働くことで、耳管の生理的機能が維持されています。