


J1034 (右の鼓膜とツチ骨、および鼓索神経:内側から後上方の図)

J1035 (右の鼓膜、ツチ骨とキヌタ骨:内側から後上方からの図)




ツチ骨頭は、中耳の耳小骨の一つであるツチ骨の上部を形成する解剖学的構造です(Gray and Williams, 2020)。
ツチ骨頭は、ほぼ球状または楕円球状の形態を呈し、直径約2〜3mmの滑らかな表面を持ちます(Standring, 2021)。鼓室上陥凹(上鼓室または上鼓室窩)に位置し、側頭骨岩様部に囲まれた空間内に存在します(Drake et al., 2019)。
ツチ骨頭の後内側面には、キヌタ骨体との間に鞍状関節(ツチ・キヌタ関節)を形成します(Moore et al., 2022)。この関節は滑膜関節であり、薄い関節包に囲まれており、耳小骨連鎖における可動性を確保しています(Moore et al., 2022)。
ツチ骨頭は、ツチ骨全体の中で最大の部分を占め、全体の約60%の質量を有しています(Proctor and Proctor, 2020)。この質量分布は、音響インピーダンス変換における重要な物理的特性となっています(Proctor and Proctor, 2020)。
ツチ骨頭の上部には上ツチ骨靭帯が付着し、さらに外側靭帯と前靭帯によって安定化されています(Schuknecht, 2018)。これらの靭帯は、ツチ骨頭の位置を固定し、適切な振動パターンを維持する役割を果たします(Schuknecht, 2018)。
ツチ骨頭は、鼓膜からの振動をキヌタ骨へと伝達する重要な役割を担っており、空気から内耳液へのインピーダンス変換に寄与します(Merchant and Nadol, 2021)。この機構により、音波エネルギーを効率的に内耳液へと伝達するための精密な機械的システムの一部として機能しています(Alberti, 2022)。
臨床的には、ツチ骨頭が硬化性病変により固着することがあり、これが伝音難聴の原因となることが知られています(Gulya et al., 2019)。耳硬化症は主にアブミ骨底板に発生しますが、時にツチ骨頭にも及ぶことがあります(Gulya et al., 2019)。
鼓室形成術や耳小骨連鎖再建術においては、ツチ骨頭の操作が必要となる場合があります(Brackmann et al., 2020)。手術時には、ツチ骨頭の解剖学的位置関係と周囲構造との関連を正確に把握することが重要です(Brackmann et al., 2020)。