短脚(キヌタ骨の)Crus breve incudis
キヌタ骨の短脚は、中耳の耳小骨連鎖を構成するキヌタ骨の解剖学的構造の一部です。解剖学的および機能的に以下の特徴を持っています(Gray and Williams, 2015):
解剖学的特徴
- キヌタ骨体から水平方向に後方へ伸びる突起構造です(Anson and Donaldson, 2010)
- 長さは約3-4mm、直径は約1mmで、長脚よりも太く短い形状をしています(Schuknecht, 2009)
- その先端部は鼓室後壁のキヌタ骨窩(fossa incudis)に靱帯性の結合で固定されています(Drake et al., 2018)
- キヌタ骨の回転軸の一端を形成しており、振動伝達において支点として機能します(Moore and Dalley, 2017)
キヌタ骨の全体構造としては、体部(corpus incudis)、長脚(crus longum)、短脚(crus breve)から構成されています。短脚は骨小窩に収まることで、音の振動伝達時にキヌタ骨の位置を安定させる役割を果たしています(Standring, 2020)。
臨床的意義
- キヌタ骨短脚の損傷や変位は、伝音難聴の原因となります(Merchant and Rosowski, 2010)
- 中耳炎の慢性化により骨浸食が生じた場合、短脚の固定が不安定になることがあります(Bluestone and Klein, 2007)
- 耳小骨連鎖再建術では、キヌタ骨短脚の位置関係を正確に再現することが重要です(Jahrsdoerfer et al., 2014)
- 側頭骨骨折の場合、短脚の固定部位が損傷を受けることがあります(Gulya and Schuknecht, 2008)
キヌタ骨は中耳にある3つの耳小骨(ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨)の1つで、ツチ骨からアブミ骨へ音の振動を伝達する役割を担っています。短脚はこの伝達システムの安定性を保証する重要な解剖学的構造です(Proctor, 2019)。
参考文献
- Anson, B.J. and Donaldson, J.A., 2010. 『耳の外科解剖学』 — 中耳および耳小骨の詳細な解剖学的構造を網羅した標準的参考書
- Bluestone, C.D. and Klein, J.O., 2007. 『小児耳疾患』 — 小児の中耳炎とその合併症についての包括的な記述を含む
- Drake, R.L., Vogl, A.W. and Mitchell, A.W.M., 2018. 『グレイ解剖学アトラス』 — 解剖学的構造の視覚的な表現と詳細な説明を提供
- Gray, H. and Williams, P.L., 2015. 『グレイ解剖学』 — 解剖学の古典的教科書で、耳小骨の解剖学についての詳細な記述を含む
- Gulya, A.J. and Schuknecht, H.F., 2008. 『側頭骨の解剖学』 — 側頭骨とその内部構造の詳細な解説書