アブミ骨頭 Caput stapedis
アブミ骨頭は、中耳にある三つの耳小骨(ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨)の中で最も内側に位置するアブミ骨の一部分です(Gray, 2020)。解剖学的および機能的に重要な構造で、以下に詳細を記します:
解剖学的特徴
- 直径約1mm程度の球状または楕円形の構造体(Standring, 2021)
- アブミ骨の上部に位置し、頸部(首部)を介して2本の脚部と底板に連結
- レンズ状の滑膜性関節面を持ち、キヌタ骨長脚の豆状突起(レンズ状突起)と関節を形成(Moore et al., 2018)
- 微細な血管と神経が栄養と神経支配を担当
組織学的特徴
- 緻密骨からなり、軟骨細胞を含む関節軟骨で覆われている(Anson and Donaldson, 1991)
- キヌタ・アブミ関節は人体で最小の滑膜関節
- 関節周囲には微細な靭帯組織が存在
機能的役割
- 音の振動エネルギーをキヌタ骨から受け取り、アブミ骨全体へと伝達(Merchant and Nadol, 2010)
- 音波の機械的エネルギーを増幅し、内耳の蝸牛へ効率的に伝える
- インピーダンス整合の機能に寄与(空気中の音波を内耳液へ効率よく伝達)(Pickles, 2012)
臨床的意義
- 耳硬化症では、アブミ骨頭と周囲の骨との間に異常な骨形成が生じ、伝音難聴の原因となる(Schuknecht, 1993)
- アブミ骨手術では、病変のあるアブミ骨を人工補綴物に置換する際の重要な指標点となる
- 中耳炎の慢性化により、アブミ骨頭を含む耳小骨連鎖の固着や離断が生じることがある(Gulya et al., 2019)
アブミ骨頭は、その解剖学的位置と特殊な構造により、音響伝達系における重要な役割を果たしています。中耳から内耳への音の振動伝達において、精密な機械的インターフェースとして機能しています(Probst et al., 2006)。