


J1055 (右側の側頭骨を横切った断面で、上部から見た下半分の図)

J1057 (右側の側頭骨を垂直に切り取った部分、中央部分:外側からの図)
頚静脈壁は、鼓室の下壁(底)を指す解剖学的構造です。中耳腔の最下部に位置し、重要な血管構造との関係を持つため、臨床的に重要な意義があります (Gulya et al., 2010)。
頚静脈壁は鼓室の下壁(底)を形成し、頭蓋底の一部となっています (Standring, 2020)。上方は鼓室腔に、下方は頚静脈球に接しています (Marchioni et al., 2015)。岬角(promontory)の下方に位置し、蝸牛窓(round window)の下縁を形成します (Swartz, 2014)。
頚静脈壁は不規則な形状を持ち、その厚さには個人差があります (Merchant and Nadol, 2010)。非常に薄い骨壁で、内頚静脈の頚静脈上球(superior jugular bulb)から隔てられています (Mudry and Declau, 2017)。この壁には複数の小孔があり、鼓室神経叢の枝が通過しています (Mudry and Declau, 2017)。
頚静脈窩(jugular fossa)は頚静脈上球を収容しており、その深さや大きさは個人差が大きいことが知られています (Haugen, 2019)。
頚静脈球が異常に高い位置にある場合、頚静脈壁が菲薄化または欠損し、鼓室内に青色の拍動性隆起として観察されることがあります (Friedmann et al., 2012)。高位頚静脈球が耳小骨連鎖に接触すると、伝音難聴を引き起こすことがあります (Mortazavi et al., 2012)。
頚静脈球の拍動が聴覚系に伝わることで、脈拍と同期する拍動性耳鳴の原因となることがあります (Sismanis, 2011)。
中耳手術中に頚静脈壁を損傷すると、頚静脈球からの大量出血が生じる危険性があります (Kojima et al., 2019)。手術アプローチにおいては、この領域の個人差と血管構造との近接性を十分に考慮する必要があります (Marchioni and Presutti, 2020)。
頚静脈壁は、鼓室の他の壁(上壁〔tegmen tympani〕、前壁〔carotid wall〕、内側壁〔labyrinthine wall〕、外側壁〔membranous wall〕、後壁〔mastoid wall〕)と共に、中耳の解剖学的構造を形成する重要な要素です (Marchioni and Presutti, 2020)。