前ツチ骨ヒダ Plica mallearis anterior
前ツチ骨ヒダは中耳の解剖学的構造の一つで、以下のような特徴と臨床的意義を持ちます(Gray and Standring, 2020; Schuknecht, 1993):
解剖学的特徴
- 鼓膜の内側面に位置する粘膜のヒダの一つです(Proctor, 2016)
- ツチ骨柄の前縁から鼓膜の周辺部へ放射状に伸びています(Netter, 2018)
- 組織学的には、粘膜下の疎性結合組織と微小血管、神経線維で構成されています(Anson and Donaldson, 1981)
- 下方へはくぼみ(前ツチ骨窩)を形成しながら伸展します
- 後ツチ骨ヒダとともにツチ骨の懸垂装置の一部を構成しています(Pappas et al., 2016)
機能的役割
- ツチ骨を鼓室内で適切な位置に固定し、安定させる支持構造として機能します(Gulya et al., 2010)
- 音の伝導過程において、ツチ骨の微細な振動を最適化するのに貢献しています(Merchant and Nadol, 2010)
- 中耳腔の換気経路の一部を形成し、鼓室前部の通気に関与しています(Kobayashi et al., 2011)
臨床的意義
- 中耳炎の際には炎症により肥厚し、鼓膜所見の重要な指標となります(Jung et al., 2013)
- 鼓室形成術や鼓膜形成術において、解剖学的指標として重要です(Mansour et al., 2015)
- 先天性奇形では形態異常がみられることがあり、聴力障害との関連が示唆されています(Jahrsdoerfer et al., 1992)
- コレステリン肉芽腫などの中耳病変が好発する部位の一つとして知られています(Yung and Vowler, 2006)
参考文献
- Anson, B.J. and Donaldson, J.A. (1981) Surgical Anatomy of the Temporal Bone. W.B. Saunders Company. — 側頭骨の外科的解剖の古典的な教科書で、中耳構造の詳細な記述がある
- Gray, H. and Standring, S. (2020) Gray's Anatomy: The Anatomical Basis of Clinical Practice, 42nd Edition. Elsevier. — 解剖学の標準的な参考書で、中耳の解剖学的詳細を記述している