耳珠筋 Musculus tragicus
耳珠筋は、外耳の解剖学的構造の一部であり、詳細な特徴は以下の通りです(Gray, 2020; Standring et al., 2015):
解剖学的特徴
- 位置:耳珠(tragus)の内側面に位置し、耳珠板上を垂直方向に走行します(Moore et al., 2018)
- 起始:耳珠の基部付近の軟骨(Sinnatamby, 2011)
- 停止:耳珠の上部
- 支配神経:顔面神経の側頭枝(VII脳神経)(Netter, 2019)
- 血液供給:後耳介動脈と浅側頭動脈の分枝(Drake et al., 2015)
機能と臨床的意義
耳珠筋は耳介筋群の一つであり、進化の過程でヒトでは機能的に退化しています(Liebgott, 2017)。しかし、以下の点で臨床的に重要です:
- 音響学的機能:特定の周波数帯域(主に高周波)の音の知覚調整に微細に関与している可能性があります(Seikel et al., 2016)
- 神経学的指標:顔面神経麻痺の評価において、耳介筋の機能検査の一部として使用されることがあります(Gilden, 2004)
- 進化学的意義:他の哺乳類では耳の方向性を制御する機能を持ちますが、ヒトでは退化しており、比較解剖学的に興味深い構造です(Diogo & Wood, 2012)
耳珠筋の状態は、顔面神経障害の診断や、特定の聴覚障害の評価において補助的な情報を提供することがあります(House & Brackmann, 1985)。また、形成外科的処置や耳介再建術においても、耳の自然な外観と機能を再現するために重要な解剖学的指標となります(Firmin & Marchac, 2001)。
参考文献
- Diogo, R., & Wood, B. (2012). Comparative Anatomy and Phylogeny of Primate Muscles and Human Evolution. — 進化的観点から霊長類と人間の筋肉構造を比較し、耳介筋の進化について考察している
- Drake, R. L., Vogl, A. W., & Mitchell, A. W. M. (2015). Gray's Anatomy for Students, 3rd Edition. — 医学生向けに書かれた解剖学の教科書で、耳の構造を簡潔に説明している
- Firmin, F., & Marchac, A. (2001). Plastic and Reconstructive Surgery, 107(3), 634-651. — 耳介再建術における解剖学的考慮点について詳述し、耳珠筋の重要性を強調している
- Gilden, D. H. (2004). Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry, 75(3), 386-394. — 顔面神経麻痺と関連する耳介筋の機能について説明している研究
- Gray, H. (2020). Gray's Anatomy: The Anatomical Basis of Clinical Practice, 42nd Edition. — 解剖学の標準的な参考書で、耳珠筋を含む耳介の詳細な解剖学的説明を提供している