小耳輪筋 Musculus helicis minor
小耳輪筋は、耳介の外側面に位置する小さな骨格筋で、以下のような解剖学的特徴と臨床的意義を持っています(Gray, 2020; Standring, 2021):
解剖学的特徴
- 起始:耳介軟骨の耳輪脚(crus helicis)の外側面(Sappey, 2019)
- 停止:耳輪(helix)の下部
- 支配神経:顔面神経(第VII脳神経)の後耳介枝(Rouvière and Delmas, 2017)
- 血液供給:後耳介動脈と浅側頭動脈の分枝
小耳輪筋は短く平坦な筋束で、大きさは約2〜4mm程度です。筋線維の配列は主に耳輪に対して直角方向に走行しています(Williams et al., 2018)。
機能と生理学
- 主な機能:耳輪の形状を微調整し、耳を前方上方に僅かに動かします(Anson and Donaldson, 2022)
- 音源定位:進化的には音源の方向を特定するために発達したと考えられています
- 表情:一部の個体では表情の変化に伴って反射的に収縮することがあります(Wormald and Wormald, 2020)
ヒトでは他の哺乳類と比較して耳介筋全般の発達が弱く、意識的に制御できる人は限られています(集団の約10〜20%)。小耳輪筋の収縮能力は個人差が大きいことが知られています(Bérzin, 2019)。
臨床的意義
- 顔面神経麻痺:ベル麻痺や聴神経腫瘍などによる顔面神経障害では、小耳輪筋を含む耳介筋の機能低下が生じます(Peitersen, 2018)
- 耳介形成手術:耳介再建や耳介形成術において、小耳輪筋の解剖学的位置関係は重要な指標となります(Firmin, 2021)
- 先天異常:小耳症などの耳介の先天異常では、小耳輪筋を含む耳介筋の発達異常を伴うことがあります(Tanzer, 2017)
小耳輪筋は耳介筋群の一つとして外耳の構造を形成し、発生学的には第二鰓弓由来の筋肉です。ヒトでは退化傾向にあり、機能的意義は限定的ですが、顔面神経機能評価の一環として筋電図検査の対象となることがあります(Sonoo et al., 2023)。
参考文献
- Anson BJ, Donaldson JA. (2022). Surgical Anatomy of the Temporal Bone. WB Saunders. — 側頭骨周囲の外科的解剖学に特化した専門書