耳介結節(ダーウィンの)Tuberculum auriculare
解剖学的特徴
ダーウィンの耳介結節は、耳介(auricula)の後縁(helix)の上方1/3と中間1/3の境界付近に位置する小さな隆起または突起です(Quelprud, 1936)。この構造は個人差が大きく、人口の約10-15%に明確に認められます(Loh et al., 2018)。
- 解剖学的には、耳介軟骨(cartilago auriculae)の肥厚部分として存在し、耳介の外側面に突出しています(Standring, 2020)。
- 組織学的には、弾性軟骨(elastic cartilage)と皮膚組織で構成されています(Gosain et al., 2003)。
- 神経支配は、大耳介神経(great auricular nerve、C2-C3由来)と耳介側頭神経(auriculotemporal nerve、三叉神経第3枝由来)によります(Williams et al., 2015)。
- 血液供給は、後耳介動脈(posterior auricular artery)と浅側頭動脈(superficial temporal artery)の分枝によります(Standring, 2020)。
系統発生学的意義
ダーウィンの耳介結節は系統発生学的に重要な構造です(Millard and Richman, 2001):
- この構造は、哺乳類の祖先が持っていた尖った耳の先端(耳尖、apex)の進化的名残(vestigial structure)と考えられています(Rubio et al., 2015)。
- チャールズ・ロバート・ダーウィン(Charles Robert Darwin, 1809-1882)は、この構造を人間の進化的起源を示す証拠として1871年の著書「The Descent of Man」で詳しく記述しました(Darwin, 1871)。
臨床的意義
臨床的には以下の点で重要です(Singh and Purkait, 2009):
- 耳介結節の存在パターンは常染色体優性遺伝形質として遺伝する傾向があります(Hildén, 1995)。
- 法医学的個人識別や親子鑑定において、特徴的な形態学的マーカーとして利用されることがあります(Rubio et al., 2017)。
- 先天異常症候群(例:Treacher Collins症候群、CHARGE症候群)の診断において、関連する耳の形態異常の一部として評価されることがあります(Luquetti et al., 2012)。
- 耳介形成術(otoplasty)や耳介再建術において、自然な外観を再現するための解剖学的ランドマークとして考慮されます(Firmin, 2010)。
この構造は単なる解剖学的変異ですが、人間の進化の歴史を示す興味深い特徴であり、臨床医学や人類学の分野でも重要な意義を持ちます(Azaria et al., 2003)。
参考文献
書籍