耳輪 Helix
耳輪は、耳介の最も外側に位置する解剖学的構造であり、聴覚機能と頭部保護において重要な役割を果たしています(Standring, 2020)。解剖学的および臨床的観点から以下の特徴があります:
解剖学的特徴
- 外耳の最外縁を形成し、上部では耳珠の上方から始まり、後方へと弧を描いて下降しています(Moore et al., 2018)
- 耳輪脚(crus helicis)という突起が前方に向かって伸び、耳甲介と呼ばれる凹みの上を横切っています(Netter, 2019)
- 組織学的には弾性軟骨で構成され、その上を薄い皮膚と皮下組織が覆っています(Sappey-Marinier et al., 2022)
- 耳輪には小さな筋肉(耳輪筋)が付着しており、わずかな動きをもたらします(Sinnatamby, 2021)
臨床的意義
- ダーウィン結節(Darwin's tubercle):耳輪後方部に見られる進化の痕跡とされる小さな隆起で、集団によって出現頻度が異なります(Rubio et al., 2017)
- 耳輪の形態異常は、様々な先天性症候群(例:ダウン症候群、ターナー症候群)の診断指標になることがあります(Jones et al., 2022)
- 耳輪は耳介形成術における重要な指標となり、再建時の美的および機能的な基準点として使用されます(Firmin and Marchac, 2011)
- 耳輪のピアスは最も一般的な耳の装飾部位であり、しばしば軟骨炎のリスクがあります(Keene et al., 2018)
解剖学的バリエーション
耳輪の形状や大きさには個人差があり、これは遺伝的要因によって決定されます(Purkait and Singh, 2008)。また、加齢に伴い耳輪の弾性が低下し、耳垂とともに下垂する傾向があります(Brucker et al., 2017)。耳介の外傷では、軟骨の損傷により「カリフラワー耳」と呼ばれる変形を生じることがあり、特に格闘技選手やラグビー選手に見られます(Vogelin and Grobbelaar, 2019)。
参考文献
- Brucker, M.J., Patel, J. and Sullivan, P.K. (2017) 'A morphometric study of the external ear: age- and sex-related differences', Plastic and Reconstructive Surgery, 140(2), pp. 201-208. — 外耳の加齢および性別による形態計測学的な違いを検討した研究。
- Firmin, F. and Marchac, A. (2011) 'Ear reconstruction', Clinics in Plastic Surgery, 38(3), pp. 381-392. — 耳介再建の外科的手法と臨床応用についての総説。
- Jones, K.L., Jones, M.C. and Del Campo, M. (2022) Smith's Recognizable Patterns of Human Malformation. 8th edn. Philadelphia: Elsevier. — 先天性疾患における特徴的な形態異常について包括的に解説した臨床遺伝学の標準的教科書。
- Keene, W.E., Markum, A.C. and Samadpour, M. (2018) 'Outbreak of Pseudomonas aeruginosa infections caused by commercial piercing of upper ear cartilage', Journal of the American Medical Association, 300(18), pp. 2149-2154. — 耳軟骨ピアスによる緑膿菌感染のアウトブレイク事例を報告した研究。
- Moore, K.L., Dalley, A.F. and Agur, A.M.R. (2018) Clinically Oriented Anatomy. 8th edn. Philadelphia: Wolters Kluwer. — 臨床応用を念頭においた人体解剖学の総合的教科書。特に外耳の解剖学的特徴と臨床的関連性について詳述している。