耳介軟骨 Cartilago auriculae
耳介軟骨は、外耳を形成する主要な弾性軟骨性構造であり、側頭骨と靭帯により結合しています(Moore et al., 2022)。この弾性軟骨は、通常の硝子軟骨と比較して、より多くの弾性線維を含むため、高い柔軟性と復元力を有しています(Gray and Standring, 2021)。
1. 解剖学的構造
- 耳珠(Tragus)、対耳珠(Antitragus)、舟状窩(Scapha)、三角窩(Triangular fossa)などの、特徴的な隆起と陥凹を形成します(Netter, 2023)。
- 外耳道軟骨と連続性を持ち、側頭骨の鼓室部に接続して外耳道を形成します(Drake et al., 2020)。
- 耳介筋(前耳介筋、上耳介筋、後耳介筋)の付着部位として重要な役割を果たしています(Sinnatamby, 2021)。
2. 組織学的特徴
- 弾性軟骨は弾性線維が豊富で、高い柔軟性と形状記憶能力を持ちます(Pawlina, 2021)。
- 軟骨膜(perichondrium)に覆われており、血管供給は限られています(Ross and Pawlina, 2022)。
3. 発生学
- 第一・第二鰓弓由来で、胎生6週頃から形成が始まります(Schoenwolf et al., 2021)。
- 発生過程での異常は、小耳症や無耳症などの先天異常につながります(Sadler, 2022)。
4. 臨床的意義
- 先天異常:小耳症や副耳などの発生異常の評価において重要な指標となります(Agur and Dalley, 2023)。
- 外傷:格闘技などでの耳介血腫(血液の貯留)により、いわゆる「カリフラワー耳」を形成するリスクがあります(Clinch et al., 2021)。
- 再建手術:耳介形成術における重要な指標となり、自家軟骨移植の際の構造的基準として使用されます(Park et al., 2022)。
- 加齢変化:年齢とともに弾性線維が減少し、軟骨の硬化が進みます(Whitaker et al., 2021)。
耳垂(Lobulus auriculae)は、軟骨を含まない唯一の部分であり、皮下脂肪組織と密な結合組織で構成されています。この特徴により、ピアスなどの装飾品の装着が可能となっています(Snell, 2023)。
5. 最近の研究動向
- 耳介軟骨由来の軟骨細胞は、組織工学において軟骨再生の有望な細胞源として注目されています(Cao et al., 2020)。