外耳 Auris externa

外耳は聴覚器の最外側に位置する構造で、解剖学的には主に以下の2つの構成要素から成り立っています (Drake et al., 2020):

解剖学的特徴

外耳道は外側1/3が軟骨性外耳道(軟骨部、Pars cartilaginea)、内側2/3が骨性外耳道(骨部、Pars ossea)に分けられます (Netter, 2019)。骨性部分は側頭骨の鼓室部(Pars tympanica)によって形成され、その内面は非常に薄い皮膚(約0.2mm)で覆われており、骨膜と強固に癒着しています。一方、軟骨性部分は耳介軟骨の延長であり、内面は皮脂腺とアポクリン汗腺(耳垢腺)を含む厚い皮膚で覆われています (Tortora and Derrickson, 2017)。

臨床的意義

外耳は音波の集音・増幅および音源方向の識別に重要な役割を果たしています (Flint et al., 2021)。外耳道の形状により特定の周波数(2,000-5,000Hz)が増幅され、中耳への音の伝導効率が高まります。また、耳介の解剖学的構造により、音源の垂直方向の定位が可能となります。外耳道の湾曲は、鼓膜を直接的な外傷から保護する機能を持ちます。外耳道の皮膚は非常に感覚が鋭く、異物感知や保護反射(咳反射など)の誘発に関与します。臨床的には外耳道炎、耳垢栓塞、外耳道異物、外耳道真珠腫などの疾患の発生部位となります (Gulya et al., 2020)。

神経血管支配

外耳の血液供給は主に浅側頭動脈と後耳介動脈から得られ、静脈は外頸静脈に還流します (Gray and Standring, 2016)。神経支配は、耳介の前部と外耳道外側部は三叉神経耳介側頭枝、耳介の後部は大耳介神経(頸神経叢)、外耳道の内側部と鼓膜外層は迷走神経耳介枝によって行われています (Purves et al., 2018)。この複雑な神経支配のため、耳痛は時に咽頭や喉頭の疾患から関連痛として生じることがあります (Lee et al., 2019)。

参考文献