涙乳頭 Papilla lacrimalis
涙乳頭は解剖学的に重要な眼の付属器官で、以下のような特徴と臨床的意義を持ちます(Gray, 2020; Lang, 2007):
解剖学的特徴
- 上下の眼瞼縁の内側1/5と外側4/5の境界付近に位置し、特に内眼角(内側眼角)に近い部分に存在します(Standring et al., 2016)
- 上下それぞれの眼瞼に一つずつあり、直径約0.5mmの小さな隆起構造です(Remington, 2011)
- その頂点に直径0.3mm程度の小さな開口部である涙点(Punctum lacrimale)が開いています(Knop and Knop, 2009)
- 涙点は涙小管(Canaliculi lacrimales)につながり、涙液の排出経路の始点となります
- 上眼瞼の涙乳頭は後上方に、下眼瞼の涙乳頭は後下方に向いています(Lang, 2007)
組織学的構造
- 涙乳頭は結合組織で構成され、その周囲には豊富な弾性繊維と平滑筋繊維(Horner筋)が存在します(Paulsen and Berry, 2006)
- 表面は重層扁平上皮で覆われていますが、涙点から内側は非角化重層扁平上皮から徐々に単層円柱上皮へと移行します(Knop and Knop, 2009)
機能
- まばたきの際に涙湖(Lacus lacrimalis)に溜まった涙液を、毛細管現象と眼輪筋の収縮により涙小管へと誘導します(Tawfik et al., 2018)
- 涙液排出系の最初の構造物として、涙の流れを制御する役割を果たします(Remington, 2011)
臨床的意義
- 涙点狭窄(Punctal stenosis):涙点が狭くなることで涙液排出が阻害され、流涙症(epiphora)を引き起こします(Sibley et al., 2013)
- 涙点閉鎖(Punctal occlusion):ドライアイ治療のために意図的に涙点プラグで閉鎖することがあります(Marcet et al., 2015)
- 涙点外反(Punctal ectropion):加齢変化や瞼の疾患により涙点の向きが変わり、涙の排出障害を起こします(Edelstein et al., 2011)
- 涙道洗浄検査:涙点からカニューレを挿入して行う検査で、涙道の開存性を評価します(Ali et al., 2017)
涙乳頭は涙器(るいき)の重要な構成要素であり、涙液の排出において中心的な役割を果たしています。その機能障害は様々な眼症状につながるため、臨床的に重要な構造です。