涙器 Apparatus lacrimalis

涙器は、眼球の保護と視力の維持に不可欠な解剖学的系統です。涙器は以下の構成要素から成り立っています(Gray and Lewis, 2020):

解剖学的構造

涙器の組織学的特徴として、涙腺は腺房と導管系からなる複合管状胞状腺で、涙の通路系(涙小管、涙嚢、鼻涙管)は重層扁平上皮または多列線毛上皮に覆われています(Oyster, 1999)。

生理学的機能

涙器の主な機能は涙(なみだ)の産生と排出です。涙液は角膜や結膜の湿潤、栄養供給、抗菌作用を担っています(Holly and Lemp, 1977)。涙液は以下の3層構造からなります:

涙の分泌が停止すると角膜上皮が急速に乾燥して白濁し、視力を失う可能性があります(Pflugfelder et al., 2004)。また、涙は瞬目(まばたき)により眼表面に広がり、内眼角の涙湖に集まり、涙点から涙小管、涙嚢を経て鼻涙管から鼻腔へと排出されます。この排出機構には、瞬目に伴う眼輪筋の収縮によるポンプ作用が重要な役割を果たしています(Jones, 1966)。

臨床的意義

涙器は様々な病態に関与します。代表的なものとして(Kanski and Bowling, 2015):