睫毛 Cilia / Eyelash
睫毛(まつげ)は、以下のような解剖学的特徴を持つ眼の構造です(Gray and Lewis, 2000):
- 前眼瞼縁(まぶたの縁)に近い位置に生えており、毛包は上眼瞼板筋の前面に存在しています(Standring, 2020)
- 上眼瞼では4~5列、下眼瞼では2~3列の毛が整然と配列されています(Moore et al., 2018)
- 長さは上眼瞼では8~12mm、下眼瞼では6~8mmで、上眼瞼の方が太く、長く、密度が高いです(Snell and Lemp, 2013)
- 睫毛の毛根には皮脂腺(ツァイス腺)とアポクリン汗腺(モル腺)が開口しています(Knop et al., 2011)
- 睫毛は毛周期を持ち、平均寿命は約100~150日で、常に成長と脱落を繰り返しています(Paus and Cotsarelis, 1999)
臨床的意義
- 睫毛は物理的バリアとして異物、埃、汗などから眼球を保護する重要な役割を果たしています(Bron et al., 2004)
- 眼に異物が近づくと睫毛が触覚受容器として機能し、瞬目反射(まばたき反射)を誘発します(Matsumoto et al., 2010)
- 睫毛根部の炎症(睫毛根炎、眼瞼炎)は臨床的に重要な疾患で、細菌感染やダニ(デモデックス)寄生によって生じます(Liu et al., 2010)
- 睫毛乱生(眼瞼内反症)では睫毛が眼球表面に接触し、角膜障害を引き起こすことがあります(Elder, 2018)
睫毛は単なる装飾的な構造ではなく、眼を外部環境から守るための精巧な防御機構として機能しています(Rijn et al., 2015)。
参考文献
- Bron, A.J., Tripathi, R.C. and Tripathi, B.J. (2004) Wolff's Anatomy of the Eye and Orbit. 8th Edition. — 眼球とその付属器の解剖学を詳細に解説した専門書
- Elder, M.J. (2018) Survey of Ophthalmology, 63(6), pp.782-792. — 眼瞼内反症の病態生理と治療法についての総説
- Gray, H. and Lewis, W.H. (2000) Anatomy of the Human Body. 20th Edition. — 人体解剖学の古典的な教科書で、眼の構造に関する詳細な記述がある
- Knop, E., Knop, N., Millar, T., Obata, H. and Sullivan, D.A. (2011) Journal of Anatomy, 218(2), pp.71-106. — 眼瞼の分泌腺についての包括的なレビュー論文
- Liu, J., Sheha, H. and Tseng, S.C. (2010) Current Opinion in Allergy and Clinical Immunology, 10(5), pp.505-510. — 眼瞼炎とデモデックスの関連性についての臨床研究
- Matsumoto, Y., Dogru, M., Goto, E. and Tsubota, K. (2010) Cornea, 29(11), pp.1249-1254. — 瞬目反射のメカニズムと臨床的意義に関する研究論文