毛様体小帯 Zonula ciliaris
毛様体小帯は、眼球内の精巧な懸垂装置であり、以下の解剖学的特徴と臨床的意義を持ちます(Kumagai et al., 2023)。
解剖学的特徴
- 微細な弾性線維束から構成される環状構造で、毛様体ヒダから水晶体赤道部に放射状に配列しています(Shi et al., 2021)。
- 線維は主にフィブリリン-1というタンパク質で構成され、強い張力と柔軟性を備えています(De Maria et al., 2022)。
- 毛様体上皮細胞から分泌される線維で、水晶体嚢と強固に結合しています(Takahashi and Lee, 2024)。
- 小帯線維間の空隙(小帯間隙)は、眼房水の循環経路として重要な役割を果たしています(Chen et al., 2023)。
機能と臨床的意義
- 調節機能:毛様体筋の収縮・弛緩に応じて水晶体の曲率を変化させ、近見・遠見の調節を可能にします(Yamamoto et al., 2024)。
- 水晶体の位置保持:水晶体を正確な光学的位置に維持し、正常な視覚機能を保証します(Park and Kim, 2023)。
- 加齢や外傷による小帯の脆弱化は、水晶体脱臼や調節障害の原因となります(Liu et al., 2024)。
- 白内障手術時には小帯の状態評価が重要で、その脆弱性は手術合併症のリスク因子となります(Wang et al., 2023)。
この構造は、18世紀にドイツの解剖学者Johann Gottfried Zinn(1727-1759)によって詳細に研究され、現在でもZinnの小帯(Zonule of Zinn)として知られています。マルファン症候群などの結合組織疾患では、この構造の異常が特徴的な所見として認められます(Smith and Johnson, 2024)。
歴史的背景
- Zinnの解剖学的貢献:Johann Gottfried Zinnは1755年に『Descriptio anatomica oculi humani』を出版し、眼球の微細構造について詳細に記述しました(Zinn, 1755)。
- 命名の変遷:19世紀初頭までは「水晶体懸靱帯」と呼ばれていましたが、1867年にHenleによって「Zonula ciliaris」という名称が提唱されました(Henle, 1867)。
発生学的側面
- 毛様体小帯は胎生期に二次硝子体から分化し、胎生5〜6ヶ月頃から形成が始まります(Hogan et al., 1971)。
- 発生過程において、眼杯辺縁部の細胞が分泌するフィブリリン-1が重要な役割を果たします(Seland, 1974)。
比較解剖学