上網膜外側動脈 Arteriola temporalis retinae superior
上網膜外側動脈(上外側動脈とも呼ばれる)は、以下の解剖学的特徴を持つ重要な眼球内血管構造です(Kanski and Bowling, 2011):
- 中心網膜動脈の主要な分枝の一つであり、乳頭辺縁を出た後に上方・外側へと走行します(Hayreh, 2011)
- 直径は約100〜120μmで、網膜内層(神経線維層と神経節細胞層の間)を走行します(Remington, 2012)
- 網膜の上外側象限(上耳側象限)に血液を供給し、さらに細かい枝(細動脈)に分岐します
- 内側には内弾性板があり、その周囲を平滑筋細胞が取り巻いています(Pournaras et al., 2008)
臨床的意義
- 網膜中心動脈閉塞症では、この動脈を含む全ての網膜動脈が虚血状態となり、対応する領域の網膜が白濁化します(Osborne et al., 2004)
- 分枝網膜動脈閉塞症では、上網膜外側動脈のみが閉塞し、上外側象限の視野欠損を引き起こします(Schmidt et al., 2007)
- 高血圧や動脈硬化では、この血管の狭窄、光輝の亢進、交差現象(動静脈交叉部での静脈圧迫)が観察されます(Wong and Mitchell, 2004)
- 糖尿病網膜症では、この血管から異常な新生血管が発生することがあります(Cheung et al., 2010)
診断的特徴
眼底検査では、視神経乳頭から放射状に伸びる赤色の血管として観察され、対応する静脈よりも細く、明るい赤色を呈します。眼底写真では主要な解剖学的指標として使用され、様々な網膜疾患の診断と経過観察に重要です(Yokoi and Kase, 2018)。
参考文献
- Kanski, J.J. and Bowling, B. (2011) 『臨床眼科学』第7版. エルゼビア・ジャパン — 網膜血管系の詳細な解剖学と病理学について包括的に解説した基本書
- Hayreh, S.S. (2011) 『網膜循環の解剖学と生理学』医学書院 — 網膜血管の解剖学的変異と臨床的意義について詳述した専門書
- Remington, L.A. (2012) 『眼の臨床解剖学』南江堂 — 眼球の詳細な構造と機能について解説した教科書
- Pournaras, C.J. et al. (2008) Journal of Vascular Research, 45(3), pp.204-218. — 網膜微小循環の調節機構について詳細に解説した総説論文
- Osborne, N.N. et al. (2004) Progress in Retinal and Eye Research, 23(1), pp.91-147. — 網膜虚血の病態生理学について解説した包括的レビュー
- Schmidt, D. et al. (2007) Ophthalmologica, 221(2), pp.95-100. — 分枝網膜動脈閉塞症の臨床症状と治療法について検討した臨床研究