黄斑 Macula lutea
黄斑は、視覚機能において中心的役割を果たす網膜の特殊な領域です。解剖学的および臨床的に重要な以下の特徴を持ちます:
解剖学的特徴
- 位置:後極(posterior pole)の側頭側に位置し、視神経乳頭の側方約3.5mmに存在します (Kaufman and Alm, 2011)
- 形状と大きさ:直径約5.5〜6.0mmの卵円形領域で、網膜全体の約2〜3%を占めます (Ryan et al., 2017)
- 構造:中心に中心窩(fovea centralis、直径約1.5mm)があり、さらにその中心に中心小窩(foveola、直径約0.35mm)があります (Purves et al., 2012)
- 組織学:
- 中心窩では神経節細胞層や内顆粒層が側方に変位し、光が直接視細胞に到達する構造になっています (Kolb, 2003)
- 中心窩には約10万個の錐体細胞が高密度(約147,000個/mm²)に配置されています (Curcio et al., 1990)
- 中心小窩では錐体のみが存在し、杆体は存在しません (Curcio et al., 1990)
- 色素:黄色調は主にゼアキサンチンとルテインという二種のカロテノイドによるものです (Kaufman and Alm, 2011)
- 血管分布:中心窩は無血管野(FAZ: Foveal Avascular Zone)となっており、周囲の毛細血管網から栄養を受けます (Spaide et al., 2015)
機能的特徴
- 視力:最も高い視力(約1.0以上)を担う領域で、細部の識別や色覚に特化しています (Purves et al., 2012)
- 光受容体:中心窩の錐体は細く(直径約1.5μm)、一対一の神経連絡(1:1接続)を持ち、高い空間分解能を実現しています (Curcio et al., 1990)
- 視野:黄斑は中心視野(視野の中心約8°)をカバーしています (Kaufman and Alm, 2011)
臨床的意義
- 加齢黄斑変性(AMD):先進国での失明原因の上位を占め、ドルーゼンの出現、新生血管形成、地図状萎縮などを特徴とします (Ryan et al., 2017)
- 黄斑浮腫:糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症などで発生し、視力低下の主要原因となります (Ryan et al., 2017)
- 黄斑円孔:硝子体牽引などにより中心窩に円形の欠損が生じる疾患です (Ryan et al., 2017)
- 中心性漿液性脈絡網膜症:主に若年〜中年男性に好発し、黄斑部に漿液性網膜剥離を生じます (Ryan et al., 2017)
- 検査法:
- 光干渉断層撮影(OCT):黄斑の断層構造を非侵襲的に観察できる重要な検査法です (Spaide et al., 2015)
- 蛍光眼底造影(FA/ICG):黄斑部の血流や病的血管を評価します (Ryan et al., 2017)
- 眼底自発蛍光(FAF):網膜色素上皮の代謝状態を評価します (Ryan et al., 2017)
参考文献