角膜内皮 Epithelium posterius corneae
角膜内皮(かくまくないひ)は、角膜の最深層に位置する重要な解剖学的構造です。その詳細な特徴と臨床的意義は以下の通りです:
解剖学的特徴
- 単層の六角形細胞からなる中皮(中胚葉性上皮)で、厚さは約5μmです (Gray and Standring, 2015)
- 細胞密度は出生時には約3500-4000個/mm²ですが、加齢とともに減少します (Yee et al., 2016)
- 虹彩角膜角の内皮を経て、虹彩内皮に連続しています (Snell and Lemp, 2013)
- 眼球血管膜の前方部に相当し、デスメ膜(後境界膜)の後面に接しています (Ross and Pawlina, 2020)
- 角膜の最も内側の層で、前眼房の房水に直接接しています (Remington, 2012)
- 細胞間結合はタイトジャンクションとギャップジャンクションにより形成されています (Forrester et al., 2016)
生理学的機能
- ポンプ機能:Na⁺/K⁺-ATPaseによる能動輸送で角膜の適切な水分含有量(約78%)を維持しています (Bonanno, 2012)
- バリア機能:前房水の角膜実質への過剰な流入を防ぎ、角膜の透明性を保持しています (Stiemke et al., 2017)
- 角膜の栄養供給:房水からのグルコースや酸素の取り込みを仲介しています (Yanoff and Duker, 2018)
- 角膜の形状維持:適切な膨潤圧を保つことで角膜の形態を維持しています (Maurice, 2010)
臨床的意義
角膜内皮細胞は再生能力がほとんどないため、損傷を受けると隣接細胞が拡大して欠損部を補います(多形性・多角形化)(Joyce, 2012)。臨床的に重要な疾患や状態には以下があります:
- フックス角膜内皮ジストロフィー:内皮細胞の機能不全により角膜浮腫を引き起こす遺伝性疾患 (Eghrari et al., 2015)
- 水疱性角膜症:内皮細胞減少による角膜浮腫と視力低下を特徴とする状態 (Edelhauser, 2010)
- 手術関連損傷:白内障手術や角膜移植などの眼内手術による内皮細胞の減少 (Storr-Paulsen et al., 2014)
- コンタクトレンズ関連:長期使用による内皮細胞への影響 (Bourne, 2017)