角膜上皮 Epithelium anterius corneae
角膜上皮は眼球の最前面を覆う重要な組織であり、以下のような解剖学的特徴と臨床的意義を持ちます(Nishida et al., 2017; Yoon et al., 2014):
解剖学的特徴
- 厚さ:約60μmで、角膜全体の厚さ(約500μm)の約12%を占めます(Klyce and Beuerman, 2018)
- 構造:5〜7層からなる非角化重層扁平上皮で、3種の細胞層(基底細胞層、翼状細胞層、表層細胞層)に分けられます(DelMonte and Kim, 2011)
- 移行:角膜縁(limbus)で眼球結膜上皮に連続し、上皮幹細胞(limbal stem cells)を含みます(Dua et al., 2005)
- 神経支配:三叉神経眼枝由来の角膜神経叢から無数の知覚神経終末(密度約7,000個/mm²)が分布しており、これは皮膚の300〜600倍の密度です(Müller et al., 2003)
- 基底膜:Type IV コラーゲンとラミニンからなる20nm厚のバウマン膜(Bowman's membrane)に接着しています(Wilson and Hong, 2000)
- デスモソーム結合:細胞間結合が豊富で物理的バリア機能を担っています(Suzuki et al., 2003)
生理学的機能
- 屈折機能:涙液層との界面で光の屈折に関与し、視力形成に貢献します(Tuft and Coster, 1990)
- バリア機能:外部からの病原体や異物の侵入を防ぎます(Yi et al., 2000)
- 知覚機能:非常に敏感な知覚神経を持ち、微細な刺激でも角膜反射を誘発します(Belmonte et al., 2004)
- 涙液膜の安定化:表層のマイクロビリと糖タンパク質からなるグリコカリックスが涙液層の安定化に寄与します(Gipson, 2004)
- 創傷治癒能:損傷後約7日で完全な上皮修復が可能です(X,Y,Z仮説に基づく修復メカニズム)(Thoft and Friend, 1983)
臨床的意義
- 角膜上皮障害:外傷、ドライアイ、感染症などにより角膜びらんや角膜炎を引き起こし、激しい痛みと視力低下をもたらします(Pflugfelder et al., 2017)
- 角膜上皮幹細胞不全(LSCD):化学熱傷や自己免疫疾患などにより幹細胞が障害され、角膜の混濁や新生血管形成につながります(Ahmad, 2012)
- 角膜感覚低下:糖尿病性神経症やヘルペス感染後に生じ、防御機能の低下により角膜潰瘍のリスクが高まります(Hamrah et al., 2010)
- 治療的意義:角膜上皮は薬物送達の主要なバリアであり、点眼薬の設計や角膜移植の成否に関わります(Gaudana et al., 2010)