腰神経節 Ganglia lumbalia
定義と解剖学的位置
腰神経節は、腰椎の前外側面に沿って存在する交感神経節であり、後腹膜腔に位置します。個数は個人差が大きく、一般的に3〜5個(平均4個)が観察されます(Williams et al., 2015)。形態は通常、紡錘形または楕円形を呈し、大きさには変動性がみられます。
神経連絡の特徴と解剖学的構造
腰神経節は、以下の重要な神経連絡を形成しています:
- 灰白交通枝:各髄節の脊髄神経との連絡を確立し、体性神経系との統合を図ります(Standring, 2020)。
- 白交通枝:内臓神経との連絡を形成し、内臓機能の自律神経性調節に関与します。
- 神経節間連絡:隣接する神経節との間に連絡枝を形成し、交感神経幹の機能的連続性を維持します。
生理学的機能と支配領域
腰神経節は、以下の重要な生理学的機能を担っています:
- 血管運動制御:下肢の動静脈の血管収縮・拡張を精密に調節し、末梢循環を維持します(Drake et al., 2019)。
- 発汗調節:下肢および下腹部の発汗機能を制御し、体温調節に寄与します。
- 内臓機能制御:下部消化管および泌尿生殖器系の自律神経性調節を行い、各器官の機能を適切に維持します。
- 立毛筋支配:皮膚の立毛筋の収縮を制御し、体温調節に関与します。
神経伝達の特性と機能調節
腰神経節のニューロンは、以下の特徴的な性質を示します:
- 神経伝達物質:主としてノルアドレナリンを使用し、交感神経系特有の化学的伝達様式を示します(Purves et al., 2018)。
- 神経活動特性:低頻度の自発的活動を基本とし、上位中枢からの入力に応じて発火パターンを精密に調節します。
- 神経可塑性:病的状態(神経損傷や慢性疼痛など)において、その機能特性が修飾され、適応的な変化を示します。
臨床医学における重要性