下頚心臓神経 Nervus cardiacus cervicalis inferior
基本的な解剖学的特徴および走行経路
下頚心臓神経は、頚胸神経節(星状神経節)から分岐し、心臓神経叢に向かう重要な自律神経である (Standring et al., 2021)。主な解剖学的特徴として、以下が挙げられる:
- 神経の直径は通常1-2mm程度で、肉眼での観察が可能である。
- 頚胸神経節から出た後、1-3本の枝に分かれて走行する。
- 鎖骨下動脈の後側を下行し、心臓神経叢に合流する。
- 鎖骨下動脈との位置関係は比較的一定しており、手術における重要な指標となる (Moore et al., 2023a)。
生理学的機能と役割
心臓の交感神経支配における主要な経路として、以下の重要な生理学的作用を有する (Drake et al., 2020):
- 心拍数の増加(陽性変時作用):洞結節に作用し、心拍数を上昇させる。
- 心筋収縮力の増強(陽性変力作用):心室筋の収縮力を増強する。
- 心筋の興奮性の亢進(陽性変伝導作用):刺激伝導系の伝導速度を増加させる。
臨床的意義と手術時の注意点
下頚心臓神経の機能異常は、不整脈や血圧変動などの重要な症状を引き起こす可能性がある (Moore et al., 2023b)。特に以下の手術時には細心の注意が必要である:
- 頚部リンパ節郭清術:神経の走行経路を十分に把握し、損傷を避ける。
- 鎖骨下動脈へのアプローチを要する手術:神経との位置関係を術前に確認する。
- 星状神経節ブロック:手技による神経損傷のリスクを考慮する。
解剖学的変異と発生学的特徴
下頚心臓神経には、以下のような解剖学的および発生学的特徴が認められる (Netter, 2023):
- 複数の枝への分岐パターンは個体差が大きく、稀に欠損例も報告されている。