中頚心臓神経 Nervus cardiacus cervicalis medius

【解剖学的概要】

中頚心臓神経は、中頚神経節から起始する交感性節後線維束である（Jänig, 2006）。総頚動脈の後方を下行し、左側では鎖骨下動脈に沿って、右側では腕頭動脈に沿って心臓神経叢へと合流する。頚部心臓神経の一つとして、上頚心臓神経（上頚神経節由来）および下頚心臓神経（星状神経節由来）とともに、心臓神経叢の形成に重要な役割を果たしている（Armour & Hopkins, 2020）。

【生理学的機能と神経支配】

心臓に対する交感神経支配において、以下の重要な機能を持つ（Levy & Martin, 2019）：

• 心拍数の調節および増加作用
• 心筋収縮力の増強効果
• 血管収縮機能を介した循環動態の調節

【臨床的重要性と手術上の注意点】

頚部手術において、以下の臨床的重要性が認められる（Chen et al., 2023）：

• 手術操作や外傷による神経損傷は、心臓自律神経系の機能障害を引き起こす可能性がある。
• 頚部腫瘍手術（神経芽細胞腫、甲状腺手術など）における周囲重要構造物（総頚動脈、迷走神経、反回神経など）の解剖学的指標として重要である。

【解剖学的変異と発生学的特徴】

以下のような解剖学的変異が報告されている（Kawashima, 2021）：

• 神経走行の重複（二重走行パターン）
• 周囲神経との非定型的な神経吻合
• 中頚神経節欠損症例における代償性神経分岐（上頚神経節または星状神経節からの直接分岐）

【画像診断学的特徴】

発生学的には神経堤細胞に由来し、胎生期における心臓神経叢の形成に重要な役割を果たす（Takahashi et al., 2022）。画像診断においては、高解像度MRIや超音波検査による直接観察が可能であるが、中頚神経節や周囲血管構造などの解剖学的指標を参考に、その走行を慎重に評価する必要がある。

【最新の研究動向】