交感神経 Pars sympathica divisionis autonomici systematis nervosi
1. 解剖学的基礎 (Gray and Drake, 2020; Standring, 2021)
交感神経は、自律神経系の重要な構成要素であり、全身の様々な器官に広く分布しています。解剖学的特徴として、以下の点が重要です:
- 起始と経路:神経節前線維は、胸髄および腰髄(T1-L2)から発生し、交感神経幹の神経節でシナプスを形成します。
- 神経支配:神経節後線維は、各神経節から分枝して標的器官へと投射します。
- 頭頚部支配:上頚神経節からの線維は、瞳孔括約筋、涙腺、唾液腺などの頭頚部の重要な器官を支配します。
- 神経節の特徴:下頚神経節は第7頚椎横突起の前方に位置し、しばしば第1胸神経節と融合して星状神経節を形成します。
2. 生理学的機能 (Hall and Hall, 2021)
交感神経系は、ストレス応答や緊急時の身体反応(闘争逃走反応)を制御する中心的な役割を果たしています。主要な生理学的作用には以下が含まれます:
- 循環器系への作用:心拍数の上昇、血圧の上昇、心収縮力の増強。
- 呼吸器系への作用:気管支平滑筋の弛緩による気道拡張、呼吸数の増加。
- 視覚系への作用:瞳孔散大筋の収縮による瞳孔散大、視覚機能の向上。
- 消化器系への作用:消化管運動の抑制、括約筋の収縮。
- 皮膚および付属器への作用:発汗の促進、立毛筋の収縮、皮膚血管の収縮。
3. 神経化学的特徴 (Purves et al., 2023)
交感神経系における神経伝達は、複数の神経伝達物質システムによって制御されています:
- 神経節前線維:アセチルコリンを主要な神経伝達物質として使用し、ニコチン性受容体を介して信号を伝達します。
- 神経節後線維:主にノルアドレナリンを使用し、α受容体およびβ受容体を介して効果を発現します。
- 副腎髄質への作用:アドレナリンおよびノルアドレナリンの分泌を促進し、全身性の交感神経反応を増強します。
4. 病態生理学 (Mathias and Bannister, 2022)