坐骨神経 Nervus ischiadicus
【基本的特徴】
- 坐骨神経は、人体最大の神経であり、仙骨神経叢の主要部分を構成する。
- 腹側の脛骨神経と背側の総腓骨神経から構成され、丁寧な解剖によって両者を分離できる。
【走行と分布】
- 大坐骨孔から臀部に出て、梨状筋の下方を通過する。
- 大腿後面では、大腿二頭筋長頭と半腱様筋の間を下行する。
- 大腿後面の筋肉(大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋)に筋枝を分布する。
- 膝窩部上端で総腓骨神経と脛骨神経に分岐し、下肢の運動・感覚を広く支配する。
【神経根構成】
- 主にL5-S2が100%参加し、L4とS3も加わることがある(5根型:86.1%、4根型:11.1%)。
- 総腓骨神経は、通常、脛骨神経より1分節尾側の神経根を欠く。
【解剖学的変異】
- 梨状筋との関係で2つの主要なパターンがある:
- 通常型(37.1%):梨状筋下孔を通過
- 高位分岐型(62.9%):総腓骨神経が梨状筋を貫通
- 貫通型の80.5%では、神経が梨状筋の背側中央(外側型)を通過する。
【分岐パターン】
- 通常は膝窩部上端で分岐するが、分岐点の位置には個人差がある。
- 高位分岐型では、骨盤内や臀部レベルですでに2つの神経に分かれている。
- 分岐後、脛骨神経は下腿後面を下行し、総腓骨神経は腓骨頭周囲を回って前面に至る。
【臨床的意義】