後大腿皮神経 Nervus cutaneus femoris posterior
1. 基本的特徴と解剖学的位置
- 仙骨神経叢のS1~S3から発生し、大坐骨孔を通過して臀部に出る。
- 大腿後部の深層筋膜内を走行し、主に大腿と膝関節後側の皮膚、大殿筋下縁付近の皮膚、および会陰外側部に分布する。
2. 詳細な解剖学的走行
- 大坐骨孔通過後、大殿筋と大腿二頭筋の間を下行する。
- 坐骨神経の外側を並走し、大腿遠位部まで達する。
- 大腿後面では、深層筋膜内を表層に向かって進み、最終的に皮下組織内で終末枝に分かれる。
3. 神経起始の詳細
- 主たる起始はS1-3(特にS2)であり、L4-5からの起始は稀である。
- 起始根数は、2根性が最多で、次いで1根性が多い。
- 下殿神経との共通幹形成が高頻度(94.6%)で観察される。
4. 臨床的重要性
- 神経損傷により、大腿後面に感覚異常が生じる可能性がある。
- 坐骨神経との近接走行により、坐骨神経ブロック時に同時麻酔される場合がある。
- 臀部および大腿後面の手術時には、本神経の走行に特に注意を要する。
5. 解剖学的変異と形態的特徴
- 分岐パターンには著明な個体差があり、単一の太い幹として走行する場合と、複数の細い枝として分布する場合がある。
- 大腿後面での走行深度は比較的一定しており、通常は深筋膜直下に位置する。
- 大腿外側皮神経や閉鎖神経の皮枝との吻合が観察されることがある。