下臀神経 Nervus gluteus inferior
1. 解剖学的特徴
- 下臀神経は、L5~S2から発生し、梨状筋下部を通って臀部に入り、大臀筋を支配する (Akita et al., 1994)。
- 神経の経路上には、仙骨神経叢から梨状筋の下縁部を通過し、大臀筋の深層に入るまでの走行において、近接する血管や他の神経との重要な位置関係がある (Standring, 2020)。
2. 機能的意義
- 大殿筋は下肢の伸展と外転、外旋に関与し、歩行時の姿勢維持に重要な役割を果たす (Moore et al., 2018)。
- 下臀神経は大殿筋への唯一の運動神経支配であり、その機能障害は歩行障害や姿勢保持の困難さをもたらす可能性がある (Patestas and Gartner, 2016)。
- 下臀神経の神経支配は体性運動性で、大殿筋の収縮力と協調運動の制御に重要な役割を果たしている (Kanaya et al., 2014)。
3. 臨床的意義
- 臀部の手術や外傷による神経損傷は、大殿筋の機能低下を引き起こし、特に階段昇降や立ち上がり動作に支障をきたす (Diaz et al., 2017)。
- 梨状筋症候群の診断において、下臀神経の走行と症状の関係を理解することが重要である (Hopayian and Danielyan, 2018)。
- 下臀神経の障害は、リハビリテーションや理学療法の重要な考慮点となり、適切な治療プランの立案に影響を与える (Varacallo and Bordoni, 2022)。
4. 神経起始の分布
- 最も一般的な起始パターンは3根性(69.1%)で、次いで2根性(26.2%)が多い (小牧, 1960)。
- 起始レベルの分布は、L5-S2が最多(70.1%)、次いでL5-S1(23.7%)となっている (小牧, 1960)。
- Akitaらの研究では、L4-S1(41.7%)、L5-S2(33.3%)、L4-S2(16.7%)、L5-S1(8.3%)の分布が報告されている (Akita et al., 1992)。
5. 解剖学的位置関係
- 従来の教科書的な記述では、下殿神経は上殿神経より尾側起始とされているが、最新の研究では、背腹の層の違いがより重要視されている (Akita et al., 1992)。
参考文献
- Akita, K., Sakamoto, H. and Sato, T. (1992) 'Stratificational relationship among the main nerves from the dorsal division of the sacral plexus and the innervation of the piriformis', Anatomical Record, 233(4), pp. 633-642. — 仙骨神経叢背側部からの主要神経間の層状関係と梨状筋の神経支配について詳細に解析した論文。