外側大腿皮神経 Nervus cutaneus femoris lateralis
1. 基本的特徴
- 第2腰神経(L2)および第3腰神経(L3)から形成される腰神経叢由来の神経である。
- 主に感覚(知覚)神経線維で構成され、大腿外側部の皮膚感覚を支配している。
2. 解剖学的走行
- 起始:大腰筋の外側縁から出現し、腸骨筋表面を斜めに横切る。
- 経路:上前腸骨棘付近に向かい、鼠径靭帯外側部を通過または貫通する。
- 走行:縫工筋近位部を通過後、大腿筋膜深部を下行する。
- 終末:鼠径靭帯下方約10cmで大腿筋膜を貫通し、大腿前外側部の皮膚に分布する。
3. 神経支配領域
- 大腿骨大転子から膝関節にかけての前外側面の皮膚を支配する。
- 支配領域の皮膚および筋膜に多数の終末枝を派生する。
4. 臨床的重要性
- 外側大腿皮神経障害(絞扼性ニューロパチー)は、メラルジア・パレステティカとして知られる。
- 主要症状:大腿外側部の疼痛、しびれ感、異常感覚、知覚鈍麻など。
- 危険因子:肥満、妊娠、きつい衣服の着用、長時間の立位姿勢。
5. 解剖学的考慮点
- 鼠径靭帯との位置関係が臨床的に重要であり、この部位での圧迫が症状の主要因となる。
- 腸骨筋との関係も重要で、筋の緊張や腫脹により神経圧迫が生じうる。
- 個体差が大きく、走行経路や分岐パターンに解剖学的変異が多く認められる。