腸骨鼡径神経 Nervus ilioinguinalis
1. 解剖学的特徴と走行
- 第1腰神経(L1)を起始とし、大腰筋を貫通して走行する (Moore et al., 2023)。
- 腹横筋と内腹斜筋の間を走り、側副筋への筋枝を分岐する。
- 腸骨下腹神経の下方を平行に走行し、鼡径管を通過する (Standring, 2024)。
- 腹直筋外縁付近で腹横筋筋膜を貫通し、皮下組織に到達する。
2. 神経支配と分布
運動支配:
- 腹横筋および内腹斜筋に運動枝を与え、これらの筋の収縮を制御する (Netter, 2023)。
感覚支配:
- 鼡径部皮膚、恥骨部、および外性器領域の知覚を担当する。
- 男性:精索に沿って走行し、陰嚢前部の皮膚を支配する。
- 女性:子宮円索に伴行し、大陰唇の知覚を支配する (Drake et al., 2024)。
3. 臨床的重要性
手術関連:
- 鼡径ヘルニア手術における合併症として、神経損傷による疼痛や感覚異常が発生することがある (Chen et al., 2023)。
- 手術時には神経の走行に細心の注意を払い、愛護的な操作が必要である。
疼痛管理:
- 慢性疼痛症候群の原因となることがあり、適切な術前評価が重要である (Wang and Smith, 2024)。
- 難治性疼痛に対しては、神経ブロック療法が有効な治療選択肢となる。