中殿皮神経 Nervi clunium medii
1. 解剖学的特徴と走行
- 第1~第3仙骨神経の後枝から派生し、仙骨裂孔を通過して後方へ向かう神経群である。
- 皮膚表面から2-3cm下の深さを走行し、左右対称に分布して、各側で3-4本の主要な枝に分かれる。
- 仙骨裂孔通過後は後方に向かって上行し、中殿筋と大殿筋の間を走行する。
- 終末部では細かい神経網を形成し、他の神経支配領域と重複することがある。
2. 支配領域と機能
- 臀部の内側3分の1を中心に、仙骨部から臀部中央部にかけて扇状に分布する。
- 皮膚分節(デルマトーム)としては、S1-S3の領域に対応している。
- 痛覚、触覚、温度覚などの感覚情報を伝達する知覚神経である。
- 外側殿皮神経(上殿皮神経)の支配領域よりも内側に位置し、上殿皮神経および下殿皮神経とともに臀部の感覚支配を担う。
3. 臨床的重要性
- 仙骨部や臀部の手術後の感覚障害の評価に重要である。
- 坐骨神経痛との鑑別診断において、支配領域の症状評価が有用である。
- 腰部硬膜外麻酔や腰椎穿刺の際の解剖学的指標として利用される。
- 神経の圧迫や損傷により、支配領域でのしびれや痛みが生じうる。
- 腰椎ヘルニアや仙腸関節障害の診断に際して、支配領域の症状評価が重要である。
4. 発生学的特徴
- 脊髄神経の後枝に由来し、体幹後面の固有背筋の発生と密接な関係を持つ。
- 胎生期の後枝分化過程において、皮膚感覚枝として特殊化する。