仙骨神経と尾骨神経 Nervi sacralese et nervus coccygeus [S1-S5 Co]
1. 解剖学的構造と分布
仙骨神経の基本構造
- 腰椎L4から仙椎S2またはS3までの神経で構成され、仙骨神経叢を形成する (Drake et al., 2020)。
- 仙骨孔を通って仙骨から出て、骨盤内臓器と下肢への運動神経と感覚神経を供給する。
- 各分節レベルでの支配領域:
- S1:主に下肢後面の筋群と足底部の感覚を支配 (Moore et al., 2023)。
- S2-S4:骨盤底筋群と会陰部の神経支配を担当。
尾骨神経の特徴
- 脊髄神経の最下端部として、尾骨周囲の限局した領域を支配する (Standring, 2021)。
- 仙骨神経とともに脊椎の仙骨部と尾骨部から発生し、解剖学的に密接な関連を持つ。
2. 発生学的特徴と個体差
- 胎児期の神経発達過程は複雑で、位置や走行に顕著な個体差が存在する (Sadler, 2022)。
- 発生段階での神経の移動と定着が、最終的な支配パターンを決定づける。
- 成長過程における脊髄の上行により、神経根の走行角度が変化する。
3. 臨床的重要性
- 病態:
- 腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症による神経圧迫症状 (Raj, 2021)。
- 骨盤内手術における医原性神経損傷のリスク。
- 神経障害による排尿・排便障害や会陰部感覚異常の発生。
4. 治療とリハビリテーション
- 保存的治療:
- 物理療法と運動療法による症状改善と機能回復 (Cameron and Monroe, 2021)。
- 適切な姿勢指導と腰部負担の軽減。
- 外科的治療:重症例における手術療法の適応。
5. 最新の研究動向
- 神経再生医療の進歩による新規治療法の開発 (Zhang et al., 2023)。