肋間上腕神経

肋間上腕神経は、第2肋間神経の外側皮枝として認知されています。これは長胸神経の前方から生じます。この神経は、腋窩の皮膚や上腕内側の様々な部位に感覚神経として働きます。

日本人のからだ(千葉正司 2000)によると

上腕に分布する上位の肋間神経外側皮枝を肋間上腕神経と呼びます。第1肋間神経では16.2%、第2肋間神経では97.3%、第3肋間神経では100%に外側皮枝が存在し、これらが肋間上腕神経になる割合は、第1肋間神経外側皮枝では100%、第2肋間神経外側皮枝では97.2%、第3肋間神経外側皮枝では29.7%です(佐藤進,1971; 相山,1972)。また、肋間上腕神経の由来については、第2肋間神経外側皮枝のみが59.5%と最も多く、次いで第2-第3肋間神経外側皮枝の2根が21.6%、第1-第2肋間神経外側皮枝の2根が10.8%、第1-第3肋間神経外側皮枝の3根、第1、第3肋間神経外側皮枝の2根がそれぞれ2.7%となっています(相山,1972)。肋間上腕神経の起始分節についての報告は表78に示しました。第4肋間神経外側皮枝は上腕には分布しないということです(河西・山本,1966)。

肋間上腕神経は通常、前枝と後枝に分かれる(51.4%)が、後枝のみの場合が45.9%、前枝のみの場合も2.7%に認められます(河西・山本,1966)。一般に後枝は前枝より太く強大で、肋間上腕神経の前枝は単独で、時には尾側胸筋神経、内側前腕皮神経の上腕皮枝と交通して、上腕前面の皮膚に分布します。また、後枝は、多くは内側上腕皮神経と交通し、あるいは単独で、上腕近位の内側から後面の皮膚に分布します(相山,1972, 1973)。

皮幹筋の遺残と考えられる筋性腋窩弓(河西・千葉,1977; Chiba et al., 1983; 児玉ら,1987 b; 澤田,1994)が出現すると、肋間上腕神経は、この破格筋の浅あるいは深層を通過し、時にはこれを貫通します。

第1肋間神経外側皮枝の多くは、肋間上腕神経後枝となって上腕後面に分布します。その出現例では、内側上腕皮神経を代償するため、内側上腕皮神経の欠如や走行異常を併発するものの、前上腕皮神経には影響を与えないということです(佐藤進,1971; 河西・千葉,1980)。また、第1肋間神経外側皮枝は、頻繁に内側上腕皮神経(48.6%)、腕神経叢の内側神経束(27.0%)、内側前腕皮神経(16.2%)などと交通し、また胸背神経に吻合したのち(5.4%)、広背筋を支配することもあります(佐藤進,1971; 河西・千葉,1980)。また、児玉ら(1987 b)は、第1肋間神経外側皮枝と胸筋神経、前上腕皮神経との交通を報告しています。

表78 肋間上腕神経の起始

表78 肋間上腕神経の起始

Th1 Th1-2 Th1-3 Th1・Th3 Th2 Th2-3 Th3
Hirasawa(1931) 200例 0.5% 1.0% 0.5% - 96.0% 2.0% -
Arakawa(1952) 241例 - 2.5 - - 95.8 1.7 -
河西・山本(1966) 37例 - 10.8 2.7 2.7% 59.5 21.6 2.7%
相山(1972) 42例 2.4 7.1 2.4 - 47.6 35.7 4.8

(出現頻度を%で表示.相山, 1972)