肋間神経 Nervi intercostales (Nervus thoracicorum)

J0828 (脊椎と筋の断面図)

J0924 (胸腔および腹腔にある左迷走神経:左側からの図)

J0929 (右側の頚神経叢と腕神経叢:模式図)

J0953 (右側の肋間神経の経路:右側前方からの図)

J0956 (腰仙骨神経叢:前方からの図)

J0959 (右大腿の皮神経:前面からの図)

J0975 (胸腔内の交感神経の右側境界線、前右側からの図)

J0976 (右交感神経の胸部網状組織、右前方からの図)
I. 解剖学的構造
1. 基本構造と走行経路
- 肋間神経は胸神経(第1-12胸神経)の前枝(腹側枝)であり、各肋間隙を肋間動静脈と共に走行する神経構造である (Gray and Williams, 2020; Standring, 2021)。
- 典型的な肋間神経(第3-6肋間神経)は、椎間孔を出た後、最内肋間筋と内肋間筋の間の筋間平面を前方へ走行し、肋骨下縁に形成される肋骨溝内を通過して胸骨縁に達し、前皮枝として終止する (Standring, 2021)。
- 下位肋間神経(第7-11肋間神経)は、横隔膜の肋骨起始部を貫通した後、内腹斜筋と腹横筋の間の筋間平面に進入し、最終的に腹直筋を貫いて前皮枝となる (Moore et al., 2022)。
- 第1胸神経前枝は主として腕神経叢(下神経幹)の形成に参加し、わずかな細枝のみが第1肋間神経として独立して走行する (Moore et al., 2022)。
- 第12胸神経前枝は第12肋骨(浮遊肋)の下縁に沿って走行するため、解剖学的には肋下神経(subcostal nerve)と呼称される (Drake et al., 2020)。
2. 分枝パターンと神経支配領域
- 各肋間神経は、主幹(main trunk)、側副枝(collateral branch)、外側皮枝(lateral cutaneous branch)の3つの主要な分枝から構成される (Drake et al., 2020)。
- 側副枝は主幹の根部近傍から分岐し、主幹と平行して前方へ走行する。この側副枝は特に第7-9肋間隙において高頻度(約70-80%)で出現することが知られている (Tubbs et al., 2021)。
- 筋枝(muscular branches)は主幹および側副枝から分岐し、以下の筋群を運動支配する:
- 胸壁筋群:外肋間筋、内肋間筋、最内肋間筋、肋下筋、胸横筋 (Netter, 2019)
- 背部筋群:上後鋸筋、下後鋸筋 (Standring, 2021)
- 腹壁筋群(下位肋間神経):腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋 (Moore et al., 2022)
- 外側皮枝は中腋窩線(midaxillary line)のレベルで主幹から分岐し、前枝と後枝に分かれて胸腹壁の側面の皮膚に分布する (Sinnatamby, 2019)。
- 前皮枝(anterior cutaneous branch)は主幹の終末枝であり、内側枝と外側枝に分かれて胸腹壁前面の皮膚に感覚神経支配を提供する (Netter, 2019)。
3. 重要な解剖学的指標と個体変異
- 肋骨溝(costal groove):各肋骨下縁の内面に形成される溝状構造で、肋間神経主幹の走行経路を予測する最も重要な解剖学的指標である (Gray and Williams, 2020)。
- 中腋窩線(midaxillary line):外側皮枝の分岐位置を示す臨床解剖学的指標であり、肋間神経ブロックの際の重要な目印となる (Sinnatamby, 2019; Siddiqui et al., 2022)。
- 肋骨角(costal angle):肋骨が最も鋭角に屈曲する部位で、この位置で肋間神経の走行レベルが肋骨下縁からやや離れることがある (Standring, 2021)。
- 解剖学的変異:
- 側副枝の出現頻度は肋間隙によって異なり、第7-9肋間隙では約70-80%、第3-6肋間隙では約40-50%と報告されている (Tubbs et al., 2021)。
- 外側皮枝の分岐位置は個体差が大きく、中腋窩線より前方(約20%)または後方(約15%)に分岐する症例が存在する (Davies and Coupland, 2018)。
- 下位肋間神経(第7-12)の腹壁内走行経路には、筋間平面の深さや分枝パターンに顕著な個体差が認められる (Yamamoto et al., 2024)。